紙の本が好き

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年始、実家から戻る途中で時間ができたので、図書館に寄って本を読んでいた。

やがて電車の時間が来たから、続きは買って読むことにした。

最初はKindleで買ってみたんだけど、開いたところであっと思って返品した。返品を受け付けてくれるKindle、やさしい。

紙の本を買おうと思ったのだ。さっきまで読んでいた紙の本と、体験が根本的に違う。開いた瞬間、これは求めていたものではない、ということに気づいた。

直感的に、違う、と思ったわけだけど、何がどう違うのか少し考えてみる。

まず、スマートフォンで見ると、1ページで読める文字数が全然違う。どうだろう、4倍くらいかな。

次に、フォントや余白を含むレイアウト、紙面の見え方が違う。紙の本では、紙面が専用にデザインされている。電子書籍もデザインはされているが、すべての本で画一的なデザインだ。

物理的なインターフェースも違う。両手で開いて持ち、ぱらぱらとめくる紙の本に対して、片手で持ち、スワイプしてめくる電子書籍。

紙の本と、オーディオブックが異なる程度には、紙の本と、電子書籍も異なる。そういうことなんだろう。

紙の本とオーディオブックの絶対的な優劣をつけようとすることはナンセンスな感じがする。それと同じで、紙の本と電子書籍にも絶対的な優劣はない。場面や用途に応じた優劣や、もっと言うと「好み」があるだけだ。

そして僕は基本的に紙の本が好きだ。それがわかった。

電子書籍が出始めた10年以上前から、ずーーっと馴染めない感じがあって、でも場所を取らなかったり、ちょっと安かったり、いい面もあるから少しずつ利用してはいたのだけど、なんとなく紙の本の方が好きで、それにまたなんとなく引け目を感じていた。

電子書籍の方が環境にやさしいのでは。新しいものを受け入れられない「旧世代」なのでは。等々。

どちらも、そういう側面もあるとは言えるだろう。

ただ、(ある程度)客観的に見ても、電子書籍の方が絶対的にすぐれているわけではないんだな、ということに今回の件で納得できて、少し自由になった。

当面はこのまま紙の本を好きでいよう、と思った。