闖入者

はるな
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公開:2024/6/25

 夫から聞いた話だ。

 先週の土曜日。出先から戻ってきた夫が2階に上がってきたら、そこには見慣れない物体。相手はなんとキジトラの猫。おそらく母が開け放っていた玄関から入ってきたんじゃないか、とは夫の弁。ときどきうちの庭を突っ切っていく、何回か見たことがある猫だったそうだ。

 夫もかなりびっくりしたそうだが、相手も相当慌てたらしい。廊下をダダダダッと走り、いちばん奥まった部屋に逃げ込んだので、夫もどうしたらいいのかわからず、ひとまずドアを閉めた。かといってそのままにしておくわけにもいかないので、そうっとドアを開けたら、いったん落ち着いていた猫はふたたびパニックに陥り、部屋中を走り回ったそうだ。わたしの服を吊るしているクローゼットに入り込み、中に入れていたかごを中身もろとも床にぶちまけ、きものを入れている箪笥の上の植物を軒並みひっくり返し、出窓部分に乗っかって外に出られないことにまた焦ってカーテンを引っかき、じりじりと夫に追い詰められ、最後には夫が開けた窓からなんとか逃げ出したが、1階の軒先でバウンドした音がした、ということだった。けがはなかっただろうか。猫だから大丈夫だろうか。

 「いるはずがないものがいると焦るし、それが哺乳類だともっと焦る」という夫の報告を聞きながら、でもわたしは「このままうちにいればよかったのにな」と思っていた。夫には却下されたけれど。