しずかなインターネット

日記やエッセイにちょうどいい
文章書き散らしサービス

ログイン

出口は雨 - 10/30

ericayou
·
公開:2026/10/31

トンネルのなかは昼間のような強い光でくまなく照らし出されており、しかも柑橘系のフルーツのようにあたたかい色をしているから、トンネル出口は雨、と知らされてもまるで別天地の噂話のように安楽な気分でいられる。剣呑なことである。いや、外の天気はこのひと月ほどの経過を煮詰めたように気まぐれで変わりやすく、激しい雨かと思えば雲の晴れ間に月が見え、また降り出したと思えばさきよりひどい車軸を流す雨に変わっている。この落ち着きのなさは、どちらがバカげているのか。付き合いきれないので内にこもるというのも典雅だろう。すでに聴覚は水の落下する怒涛とその反響ですきまなく埋められている。

現象は言葉によって記述されるが、言葉は万能ではない。蜘蛛の糸のように緻密に編まれた文章もかならず針のさきほどの隙があり、隙は目を近寄せて見れば赤子が通りそうなほど大きく見える。穴のむこうはちいさな光の敷き詰める星の彩る宇宙であり、流星が横切る。

言葉を繰ることの無意味なこと。無理して説明しなくともよいのだと思うが、いま抱えている「このもの」をどうしたらいいのかわからないのだ。これのむこうに行けないのだ。

いや、どのみちこれを置いては行けない。尻のうえのところで繋がっていて、すこし下ろそうとしてもついてきてしまうのだ。だから言葉はいらないのだ。雨音が耳のなかで、じょじょに大きくなる。