私は妖怪が苦手である。
話は単純で、怖くて不気味に感じるからであって、それが故に境港観光を避けていた。
でもせっかく山陰に住んだのならば一度ぐらいは行かねば、ということで、境港に行ってみた。
そもそもこの訪問には前段階がある。
少し前、イギリスの児童文学について考える機会があったのだ。
イギリスの児童文学と言えば出てくるイメージの一つが妖精である。
こちらとて架空の生き物なのに、不思議と私はこれらに対しての恐怖心はほとんどない。
では妖怪と妖精の違いはなんだろうと考えた時に、どちらも不思議な世界の生き物という点では同じなのかもしれないと思った。
科学がいろいろな現象を発見、説明をつけてくれる前、
科学が圧倒的な知識を与えてくれ、
技術進歩が人類に圧倒的な制御力を与えてくれる前、
世界はもっと不思議に満ちているように感じられたのかもしれない。
不思議なこと、不可解で、人間に制御のつかないことに思いを馳せる傾向が今よりも強かったのだろうか。
そう考えてみると、人間の心が不思議に思いを馳せた産物なのかと思うと、
妖怪もさほど恐れなくともいいのかもしれない、と思ったが故の境港訪問となったのだ。
結果として、境港は面白かった。
面白かったが、とはいえやはりちょっと苦手だった。
所狭しと妖怪や鬼太郎がいて、
あやややや、やっぱりちょっと怖い
と可愛いものを見ても思った。
でもなんだか少しタイムスリップさせてくれるような不思議な街の雰囲気は、一種のアミューズメントエリアだった。
どくろの妖怪の像に小さい鬼太郎のぬいぐるみを乗っけて写真をとっている人もいて、
訪れてる人たちにとっての妖怪の身近さに驚いた。
私にとって妖怪が身近になる日は来ないだろう。
でも、その世界観は少し身近になった日だった。