しずかなインターネットと「家賃を払っていない味」

ether_fungus
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年末に書こうかな、と思ってそのままにしていたネタを。

「家賃を払っていない味」とは何か

基本は「採算性が確保できると思えない味」のこと。

店主が不動産オーナーの料理屋は賃料がかからないばかりか場合によっては飲食業で利益を出さなくても家賃収入で食っていけたりするので他の多くの飲食店より安く提供できたり一見同じ価格帯でも使ってる食材のランクが高かったりする。これを専門用語で「家賃を払っていない味」と言います

https://twitter.com/meikyu_R/status/1648907014964408322

「採算度外視・潰れない」が要件なので美味しくないパターンもあり、

家賃を払っていない味、という表現を今見知ったが、「自己保有の物件で営業しているから、家賃分の経費を食材費に充てている結果めちゃくちゃ美味しいパターン」と「一等地にあるのにめちゃくちゃ不味く、でも店が潰れない」パターンと二つあるのか

https://twitter.com/aym_rosetty/status/1736242826839814377

ランドオーナー・不労所得・年金収入・税金対策などが組み合わさることで、「採算と事業継続性は・・・?」みたいな状態のサービスが発生したりします。これが「家賃払っていない味」。

採算度外視の飲食店の形容として「家賃を払ってない味」があり、関連して「家賃収入がある味」「年金をもらっている味」などがありますが、僕が通った中でコスパ最強の店は「家族が同じ敷地で病院を経営している味」でしたね。我が家ではその店を「慈善事業」と呼んでいました

https://twitter.com/parosky0/status/1738355641159467235

類例に「ちょっと人件費があやしい感じの味」などがあり、「そういえば料理人はビザがおりやすいって話があったような」とか思ったりするけど本題から外れるのでやめ。本当はどうだったのか不明だし、今はどうだかもわかんないしね。

インド料理店増加の裏で、タンドールブローカーが暗躍 | 日刊SPA! (nikkan-spa.jp)

Webサービスと「家賃を払っていない味」

Webサービスにもこれに類する例はあって。ここ「しずかなインターネット」は「家賃払ってない味」だとおもう(disってないからね?ちゃんとお布施もしてるからね??)

「しずかなインターネット」については開発者の人も言ってた気がするのでそんなに間違ってはいないはず。

すごく正直な話、20代のときに先20年間くらいは働かなくても何とかなるくらい収入を得たので、お金にならないものを時間をかけて作れるようになったというのが大きいです。

Zennもしずかなインターネットも余裕がなかったら作らなかったと思う。

https://twitter.com/catnose99/status/1734772999491133620

Webサービス、純粋にかかるコストとしてはだいたい人件費(開発費)、サーバ代(通信費・インフラ利用料)、人件費(保守運用サポート)、で構成されている。BtoC、特にゲームとかの場合は、ここにあほのような額面の広告宣伝費がのっかってくるんだけどまあこれは省略。

サービスの規模をスケールすればその分サーバ代にお金がかかり、保守サポートはケチると客が逃げる(ちなみに本当に「逃げる」だけで、手厚くしても客が増えたりはしない)。

KPIについてはどういうビジネスモデルを採用するかにもよるんだけど、まあ老人の昔話程度に。採算性を確保するには年間どこまでを目標に月次でどの程度売り上げとして稼がないとならんのかという目標値があって、アクティブユーザ当たり課金額やらユーザ生涯課金額を仮置きし、逆算でアクティブユーザ数やユーザ数を試算しつつ、目標売上を達成するためにどの時期にどの程度集客してサービスの活況度を維持できるだけのサービスメニューをいつまでに提供しないといけないかの年間計画を立てたりとかするわけなんだけど、だいたいこれ無理ゲーじゃね?みたいな数字が出てくる。めんどいしつらい。まじでつらい。

いや、ここで「家賃払ってない味」の話に戻るんですが。

普通、採算をとらないといけないサービスって、最低限でも「エンジニアやチームメンバーが食っていける程度の給料を払う」前提なのですよ。これが重い。人月単価80の要員がフルで3名、これだけで月額240万。単価設定についてはまあ色々言いたいこともあるとおもうがとりあえず仮で、な?

ここで、このエンジニアチームの人件費240万がまかなえる売上をたてるには、どんだけユーザ数がいるの?って計算してみてほしい。登録したユーザのうち、その月にまだアクティブなユーザがいて、課金者はそれのさらに数パーセントだとして。で、じゃあそのユーザー数を支えられるサーバ代っておいくら万円?って話になるわけですよ。でもってそのサーバ代・インフラ費用も必要な売上に載ってくる。Misskeyの最大手が100万超えって話とかあったよね。

こういう諸々の大人の事情を存分にふりかけた結果、新サービスっていうのは結構な割合で世に出るときにはまあまあつまんねーサービスになっちゃったり、クソみたいな機能のアプリになっちゃったりするわけで。まあユーザ目線で見たらクソはクソなので、別に擁護はしないけど。同情もしなくていいけど。

ちなみにマネタイズの難易度は、

[サーバ代だけ稼げればok]<<<<<[サーバ代+エンジニアチームを食わせる給料]<<<[サーバ代+人件費+広告宣伝費とか諸々+純利益]

みたいなかんじ。大きい会社でやるときは一番最後のやつになる。マネタイズおつらい。

そういう意味で個人開発かつサービスで食わせていかなきゃいけない人間がいないっていうのはめっちゃ強ぇな、と思う。

サービスのコンセプトや世界観を貫き通すっていう意味ではこういう形態しかないのかもねーとか思ったりする今日この頃。立ち上げ期のSkebとかもそんなかんじだったよなーとか。

@ether_fungus
備忘のためにつらつらと。 プロフィール画像はPlan 9のGlendaです。