昨年秋に心肺停止し危篤状態となり、CPRで命はとりとめたものの、目を開けてはいても周囲の環境に反応できず動くことも話すこともできなくなった寝たきりの母。食べることが人一倍好きだった母は、経口摂取が不可能になった今、胃ろうで栄養を注入している。
ずっと重篤患者用の病棟で入院生活を送っているのだが、担当医の先生のご厚意で、おととい10か月ぶりに病院の外に出られることになった。外出といってもローラー付きのベッドに寝たまま、機械に繋がったままの状態で、病院の駐車場に10分間出ただけなのだけれど。
それでも外の空気にふれて楽しかったのだろう。付き添った父によると、「暑いね」とでも言いたげに口をぱくぱくしていたそうだ。良い刺激になったようで、よかった。
祝日でお休みだったはずの先生も、何かあってはいけないということでスタンバイするために出勤してくださったのだそうだ。あの病院に入院できたことは本当にラッキーだったと思う。
併存疾患リスクと合併症もちの高齢者である母に意識が戻る日はやってくるのか。家に帰ることはできるのか。医師の経過報告を受け、さまざまな資料を読み、その答えはとっくにわかっているけれど、口に出すことはできない。
父や叔父はまだ希望を持ち続けているようなので「時間はかかるけどきっと元気になるよ」などと言って彼らを励ますのだが、それも虚しい。そんな時は自分でついた嘘の背後から現実がにゅっと顔を出し、つらさが増す。
同時に、本人が一番苦しくてもどかしい思いをしているのだから、つらいなどと文句を言うのはどう考えたって勝手すぎるだろう、と自分を責めてしまう。

母の命はまだそこにあるのに、私は大きな喪失感をもてあましていて、どうこの気持ちを処理したらいいのかわからない。整理がつかない。
そんな中、「終末期の延命治療全額自己負担化」を公約に掲げる政党が単独で法案を提出できる11議席を確保した。母のような人間が消えれば良いと考える人が世の中にはたくさんいるのだな。私の心はまた坂道を下り方向にすべり始める。
そんな時に見つけたのがこのポッドキャスト『ゆるやか死生学』だ。尾角光美(一般社団法人リヴオン代表)さんがホストする番組。
※Spotify, Amazon Music でも視聴できます。
なんかスピリチュアルな怪しいやつ?と不安になり調べてみたところ、尾角さんご自身が10代の時に自死でお母様を亡くされたことをきっかけに遺児支援活動を経て立ち上げた団体で、グリーフケアの他にも、子どもの自殺を未然に防ぐための心のサポートなどいろいろな活動に取り組んでいらっしゃるようだ。疑ってごめんなさい。
家族や友人のいのちの問題で悩んでいる方は、とにかく騙されたと思って聴いてみてほしい。苦しみや悲しみを乗り越えなくてもいいのでは?つらさを忘れて心機一転スタートすることがゴールではないのでは?宙ぶらりんの気持ちを見つめることで何かわかるかも?という提案に、私はとても救われた。
押しつけではなくて、最近の死生学ではこんなアプローチもありますがどうでしょうねー、という感じで、一緒に考えてみよう式なのが良い。
死生学の歴史を体系的に教えてくださる回もあり、とても勉強になる。◼️