All the Sinners Bleedを読んだ感想文

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『All the Sinners Bleed』を読了した。この本は単なるサスペンス小説にとどまらず、社会的な不平等と人種差別の深層に切り込んでいて色々考えさせられる部分が多かった。

ちなみのこの本はオバマ元大統領が2023年のお気に入りの一冊として選んだこともあり、期待値は高かったが、それを遥かに上回る内容だった。

元FBI捜査官のTitusは地元ヴァージニア州のCharon Countyで黒人初の保安官。そこで黒人の生徒が白人の先生を銃で殺害し、その生徒は白人警官によって射殺されるという悲劇が起こってしまう。そして事件は残虐な連続殺人事件を紐解く鍵になっていく。

『ハンニバル』を彷彿とさせる残虐な殺人と心理的なサスペンス、人種問題、権力の乱用、正義と復讐というダークなテーマを巧みに織り交ぜながら、緊迫感あふれる展開に引き込まれた。Titusは元FBI捜査官という経歴を持ち、黒人コミュニティと法執行機関の間の立場にいる。この独特な立場にいることからこれらの複雑な問題に対処する上で重要な役割を果たす事になるのだが、改めて警察と黒人の問題は深刻なものだと感じた。

Netflixの『ダーマー』でも描かれるように、被害者がマイノリティである場合の警察の対応が不公平であることが浮き彫りになっており、もし被害者が白人だったら犠牲者はあそこまで増えなかったのではと考えずにはいられなかった。

ジョージ・フロイドの殺害事件からBLM(Black Lives Matter)運動が世界的に知られるようになり、黒人が多く居住する地域での警察官による暴力行為が頻繁に起こっている現実がある。ある記事によると、黒人男性は1000人に1人の割合で警察官に殺害されていると報じられており、2013年から2019年の間に殺害行為を行った警察官の99%が起訴されていないという分析もある。(以下記事参考)

『All the Sinners Bleed』は、サスペンスとしての高い完成度を持ちながらも、読者に社会的な不平等と人種差別について深く考えさせる。この小説は、ただのエンターテイメントではなく、現実世界における重要な問題に目を向けさせる一冊として、強くおすすめしたい。