仕事の話

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公開:2026/3/30

今の会社のSlackを何気なく遡っていたとき、IT業界に入るきっかけとなった社会人スクールでの同期が、かつてフリーランスとしてこの会社に関わっていたことを知った。

彼女とは頻繁に連絡を取り合う関係ではなかったが、少人数のスクールだったこともあり、当時はお互いに刺激を受けながら励まし合って業界に踏み出した同志のような存在だった。卒業後すぐにフリーランスとして活動していたことは知っていたが、まさか同じ会社に関わっていたとは思いもしなかった。

私がWebからコンピューターサイエンスまで幅広く学びを深めていく一方で、彼女は自身のWebの知識を活かして講師として初心者に教えたり、執筆活動を行っていた。もともとマナーやルールを大切にするタイプで、話し方や立ち振る舞いからも教える側に向いている人だと感じていた。そんな彼女は自分の仕事に対して強いプライドを持っていた。だからこそ無理のある納期での依頼に対してはしっかりと意見を伝え、自身の稼働とのバランスを考えながら仕事を選んでいた。その姿勢はフリーランスとしての自由を守るために必要なものだったのだと思う。しかし、その後この会社から彼女に仕事が依頼されることはなくなったようだ。実際私が参画した頃には名前こそ残っていたものの実務を担うメンバーとしては機能していなかった。そして後に人づてに彼女がフリーランスを辞め、会社員として働いていることを知った。

その一連の流れを知って、私は改めてフリーランスという働き方について考えさせられた。

私は良くも悪くもプライドというものをほとんど持っていない。 それは自分のやりたいことと仕事をある程度切り分けて考えているからかもしれない。私にとって仕事とは、契約した会社の利益に貢献するための行動であり、その中で自分にできることを淡々とやるというものだ。特別なこだわりや理想を持ち込むというよりは、求められている役割を正確に果たすことを優先している。(前提として自分なりにプロダクトの方向性や会社のビジョンを選定した上での話になる。倫理的に問題があるところではもちろん貢献どころか契約すらしないのは当然と考えている。)

特にフリーランスになってからは、この考え方がより強くなった気がする。 フリーランスは安定しているとは言えず、契約も簡単に終わってしまう。だからこそ目の前の仕事に対して誠実に向き合い、価値を出し続けることが何より重要になる。とはいえ、そのために働き方や時間を犠牲にしているわけではない。 むしろ、このスタンスでいることで信頼が積み重なり、結果的に単価や働き方に対して柔軟に対応してもらえる場面が増えてきた。そして、その中で生まれた余白の時間を自分の好きなことや伸ばしたいスキルの習得に充ててきた。そうして少しずつできることが増えていき、それに伴って求められるスキルも自然と広がっていった。気づけば仕事に困ることはなくなっていた。つい最近まで中卒だった自分を思うとその変化に周りが驚くのも無理はないのかもしれない。

働いていく中で重要なのは、代えのきかない価値を提供し、単価と発言権を上げていくことだと思っている。 スピードと精度を高めることで自分の立場を守りつつ相手のニーズを的確に汲み取り、この人でなければプロジェクトが回らないと思われる状態をつくる。そうなれば、納期の調整や単価の交渉もルールを振りかざすことなく自然と自分のペースで進められるようになる。

私の場合は、まずプライドを捨てて相手の懐に飛び込み、ニーズを徹底的に理解するところから始める。そして、必要なスキルを泥臭く身につけていく。そうしてさまざまな領域に触れていく中で、新しい発見が生まれ、それが次のキャリアへとつながっていく。好奇心の強い私にとって、その新しさそのものが面白く、気づけば仕事を通じて人生そのものがより楽しくなっていた。今自分の好きな時間で追求していることも、元を辿れば仕事で未知の領域に足を踏み入れたことがきっかけだったりする。仕事とやりたいことは切り分けているつもりだったのに、結局は仕事の中からやりたいことが見つかっている。そんな少し皮肉な構造も、悪くないと思っている。