ザーザー雨の香林坊、尾山神社のステンドグラスと境内奥にある暗い高台の小道、銀皿のターバンカレー、黄色いグラデーションのレモネード、しみしみの車麩、夜には派手になる兼六園、曇り空に咲く藤。
金沢というとどうしても、靴下まで濡らしたあの雨を一番に思い出してしまう。どうして足が濡れると気持ちまで冷たくどんよりしてしまうんだろう。手が濡れただけではこうはならない。足じゃなく靴下か。手袋がじっとり濡れてもすぐに外せばいいもんな。
対照的に温かいイメージで思い出すのが、豊かだった食の体験。茶屋街の金沢おでん、これまでの人生で最も普段とかけ離れた朝食だった兼六亭のほうじ茶粥と湯豆腐と抹茶、グリルオーツカのホワイトソースがけエビピラフ。道端の小さなパン屋で買ったベーコンサンドのベーコンを1枚、地面に落として叫んだな。数秒前には空腹に輝いて見えていた肉を、ゴミとして回収しましたよ。
フルーツむらはたのパフェ、今はラフランスをやっているようだ。
水たまりを避けながらひたすら宿を目指した雨の冷たさのあとに、楽しくお腹を満たしたいくつもの体験を思い出すと、いつになったら終わるのかとうんざりするようなどんより気分も濡れた靴下を脱いで足とお腹を温めれば晴れるんだな、と再確認できる。
ここに書いた金沢は春だったけれど、今は朝晩めっきり冷える初冬だ。もう半年が経った。