これまでの国内旅行の北限は福島県なので、キタカミの里のモデルと言われる北東北には行ったことがない。が、実際に行ったことはなくとも日本に住んだことがある人ならば、ちんまり小ぎれいな公民館や家の裏に停まる軽トラック、アスファルト道路と田んぼの隣接する道などの風景にはどこか懐かしさを感じると思う。ニュースや映画やアニメで見たことがあるし、社会科目で勉強するし。
家と家の間隔が広くて、空も地面も広くて、綺麗な水源がある。それでいて、どこかしら閉鎖的な雰囲気もある。その土地に根付く年月が長い人が多ければ自然とそうなるだろう。
『キタカミ「センター」』、『ともっこ「プラザ」』という施設名に日本の田舎あるある(=施設リニューアル時、変更後の施設名称にとりあえず外来語を使う)を感じた、という感想が新鮮で面白かった。「たまプラーザ」の絶妙な古臭さみたいなもんかなと思って調べたら、「プラザ」ってスペイン語なのか、と脱線した。知らなかった。
住民間では「センター」や「プラザ」が指すものが何なのかが明確だがよそ者にとってはそうではないように(個人的にはカタカナで「プラザ」だと屋外公園というよりは建物施設を思い浮かべてしまうのだが、それは駅ビルとかに入っているいわゆる旧ソニプラのせいなのか??スペイン語の意味は広場なので私よりもキタカミが正しい…)、その土地特有の雰囲気、暗黙の了解、土地の者とよそ者の区別は都会よりも濃くあると思う。あくまでこれまでの学習や創作物から得たイメージからの想像だが。
中でも印象的なのが、てらす池や落合河原などで特に強く感じる、黄泉の国との境が曖昧な雰囲気。これまでのポケモンでもホラー・オカルト要素は定番だが、あくまで広い一地方の中の小さな部分(タウンや森やダンジョン)がその役割を担っていたと思う。けれどもキタカミの里は、マップ全体にその雰囲気が漂う。
DLCでの追加マップなので本編よりも規模が小さいのは当然なのだが、里から出られない(隣接地域に行くことができない)マップだからこそ、その薄ら恐ろしい雰囲気がキタカミのどこに行っても低く漂っているように思えてくる。
恐山や遠野というモチーフ元から感じる雰囲気と似ている。死後の世界や不気味な妖怪は、ポケモン図鑑やレジェアル(こちらの舞台は北海道がモデルとされるヒスイ地方だが)で示されるようなポケモンの怖い部分、理性でコントロールできない未知の部分とつながっている気がする。
そんなフィールド自体の風景や雰囲気もさることながら、キタカミは音楽がとても素敵だ。ひなびたような音の響きとドラマティックな旋律。音楽に集中しながら単純タスクをこなすこともあれば、バックグラウンドミュージックとして聞き流すこともある。「聞きたさ」と「うるさくなさ」が絶妙で本当によい。声高ではないのに確かに遠くまで響いていきそうな、坂道や山の斜面をゆっくりと立ち上って頂上まで広がっていきそうな、ゆらゆらした湯気のような。
ちなみにパルデア地方・テーブルシティの音楽はうるさい。希望に満ちた元気なサウンドでキラキラなのだが、うるさい。テーブルシティやアカデミーに用事があるときは、クラベル校長なんとかしてくださいと思いながら歩いている。