繭バクダンの威力が大きいのではなかった地球がちいさいのである蚕が桑の葉を食べるように何ものかの権力によって世界は喰い荒らされ、その腹におさまるふとるのは国であるのか主義であるのか(トニカク人間ではない)あ、ひとすじの糸状のものが中空にまい上がりなおまい上がりその噴煙ようのものががんじがらめとなって地球をとりかこみ完全な一個の繭となるころは中のサナギも殺されてほんのひとまき絹がとれる、というのであった。(伊藤比呂美編『石垣りん詩集』(岩波文庫)より)shogo