昨日のデートは、私がキーケースを探したい、と言ったことが始まりだった。スマートキーを2個、鍵3本を入れておくには、今のケースだと些か子供っぽいかな、と思っていた。サイズ感がしっくり来てないのもあって、流石にそろそろ買い替えたかった。
……あと、その。彼から合鍵を貰ったので。その記念もあったりする。
あ、過去イチで気合を入れたファッションは「かわいい」と言ってもらえました。よかった。
とりあえず、ショッピングモールをぶらぶらする。彼が雑貨店には目をつけてくれていたので、そこを目指しつつ、まずはぶらぶらと館内を散策する。
手を繋ぎたいな、と思ったけど、手汗が恥ずかしいな、とも思ったので、腕をこっそり絡ませた。彼がそれに気付いて、組みやすいようにしてくれる。こういうところが紳士で好きだ。
1階から3階まで、1時間くらい見て回ったけど、目当てのものはなかった。仕方ない、お昼を食べるか、となって、ふと前から気になっていたキーケースが脳裏をよぎった。インターネットで見た、革のお財布みたいなケース。
……あれなら、入りそう。お値段がそれなりにするから前は諦めていたけど、今なら買える。
彼に正直にその話をする。付き合わせてごめんね、と言ったら、大丈夫、君と一緒に見て色々回ったの楽しかったから、と言われる。……まあ、うん。照れる。
お昼を一緒に食べる。シェアしても大丈夫な人なので、それぞれのおかずを少しずつ分け合った。そういうことが出来る人で本当によかった。
急ぎの用事で、彼が大家さんに呼ばれたみたいなので、行くはずだったショッピングモールのはしごを取りやめ、予定を変更。彼の部屋に行って、ハグしあって、少しだけ私のtodoをこなして、趣味の話をして、触れ合って。
……気付けば、彼とはいつもハグしている。背中から抱きかかえられたり、横から腰を抱かれたり、正面から抱きしめあったり。最初に会った時からそうだった。チャットしながら、ああ、ハグしたいな、とずっと思っていた。実際そう文面でも打ったし、初めて顔合わせした時もハグしてもらった。
あんまり他人とべったりのスキンシップを取るのは苦手なんだけど、彼はどうしてか別だ。もっと触れ合ってたいし、触ってほしい。そのまま、健全なまま、ゲームとか動画とか見たりしたいのに、気分がノっちゃうのはどうかと思う。
そうして別れた帰り道、気になっていたキーケースを改めて調べ直す。カラーバリエーションがあるらしいと見て、悩む。
どうしようか。自分の好みとしては青系が好きだが、灰色とかベージュ等の落ち着いた色も好きだ。でもどれも決め手にかけるなあ、と画面を下にスクロールしていく。
手が止まる。
蘇芳の水鏡色。
このハンドルネームは、元をたどれば蘇芳色(すおういろ)からも貰ったものだ。それこそ、10年以上の付き合いの色。もう変えてしまったけれど、前はIDもそれに因んだものにしていた。
これだな、と思った。迷うことなく、手が購入ボタンに伸びる。あれよあれよと準備が進み、気付けば確認メールが来ていた。
直感で選んだ物について後で後悔することは、あまりない。今回も、多分、ずっと使い続けるんだろうな、と思っている。
……彼についても、私の本能が好きだとなってしまったので、この関係がずっと長く続くといいな、とは思っている。