フェデリコの休みの日。
私はその日に合わせて休暇を取り、恋人同士水入らずの一日を過ごすと決めていた。
停泊先に観光はおろか、見て回るものはなく治安が不安定だという話をアーミヤから聞かされているので、とてもじゃないけどお外で仲良くデートとはいかない。
せっかくの休みが重なったのに、この日が無駄に終わるのはあまりに勿体ない。恋人らしいことをしたくてフェデリコにサプライズを考えていたのに……。
「ドクター、本日は休暇だと伺っておりますが」
気持ちがどんよりしていたところにフェデリコの声がして「ん?」と軽い返事をし、彼の方へ振り向く。
「現在地点からラテラーノへの距離はそう遠くはありませんので私の用事を兼ねてですが、私の家にあなたを招待したいです。ドクターさえよければですが。」
「……フェデリコのお家?いいの?」
「はい。近い内に誘うつもりでいましたが、今日はその時だと判断しました。それにラテラーノの街並みを案内もできますから是非に。」
答えはもちろん
「うん、せっかくだから行きたい…ずっと前からラテラーノには行きたくて憧れていたんだよ、そ、そ…それにまさかフェデリコのお家にも行けるなんて本当に本当に嬉しい!」
暗い気持ちが一気に吹き飛んで花が咲き乱れるようにパーっと笑顔になってしまった。きっと今の私の顔はキラキラして輝いている。嬉しいあまりにフェデリコの胸に飛び込んで抱き締めてしまうほどに。
「私もあなたを誘うことができて悪くはない気持ちです。」
笑うことはない彼の声色のトーンが上がり、頭上の光輪が少しだけ強く光る。表情の代わりに『嬉しい』を代弁しているかのようで心做しか可愛く思える。
普段の行動からは見えにくいフェデリコの感情。
笑わない彼の印象から無感情なロボットを想像する人は多く、その誰もが彼の本質を知ることがない。容赦のなさと融通の効かなさがよりそれを引き出しているも、心を開いた彼の姿を見ることでそれは間違いであると理解できる。
「フェデリコも嬉しそうで良かった、じゃあ準備してくるね!」
「分かりました。」
私がその一人。恋人になれたのもフェデリコを誰よりも先に理解し、彼の在り方を決して否定しなかったからこそ歩み寄ることができた。
共に過ごす掛け替えのない毎日の一日一日が本当に幸せで充実している。
そうして私はクローゼットの扉を開いた。
◆◆◆
正午ごろ。
清々しい青空の下、ロドスの輸送用ヘリで送ってもらいラテラーノへ着いた。
この国はどの国と比べても平和と繁栄に満ちている。
眩しいほどに白く美しい景観、ラテラーノの建築美が誇る建物が軒を連ね、天高く聳える塔には巨大なサンクタの像が佇み、甘い香りが漂ってくる。
そのラテラーノの景色を眺めることのできる高級レストランで2人はランチをしているところだ。
「あなたの好みに合わせて予約した料理ですが、お口に合いますか?」
「とーっても甘くて美味しい…流石はラテラーノ、甘味づくしだね」
甘い。とにかく甘い。
どれもこれも甘い物だらけ。
それでも自然と食が進むぐらいに美味しい。