―加速してゆく姿は美しい
箱根駅伝100回記念大会をいつもの場所で見届けた帰り道、私は関ジャニ∞の凛を聴いていた。
電車の中なのにポロポロ涙が出てきそうでそれを1人ぐっと堪えてた。私は生粋の順大ガールだ。学校とは縁もゆかりも無いが意識して駅伝を見始めた中学時代から順大を応援している。彼らが勝てば倍嬉しいし、負けると倍悔しい。
あの歴史あるブルーのユニフォームと紅白のツーカラーのタスキを掛けた20年分の選手たちはだいたい覚えてる。ひとつのチームに惚れ込んだのはこの学校だけ。
そんな順天堂大学が今年、シード権争いに敗れただけでなくまさかの戸塚中継所で繰り上げタスキになってしまった。前回大会は5位。昔は駒澤大学と2強時代を誇ったことだってある駅伝の名門校のこんな姿を見ることになるなんて。ただただ信じられなかった。
色んな人に聞かれる。
「なんで順天堂なのか」
関西出身の陸上部の子が母校でもない学校を追いかける理由。そこには1人の選手がいた。
順天堂のエースで9区の激闘を何度も見せてくれた高橋謙介選手。第74〜77大会を引っ張った大エース。20キロを超える駒澤との駆け引きは面白すぎてテレビを食い入るように見ていた。そして今でもあの美しいフォームが忘れられないでいる。伸びた脚の無駄のない動きは馬のようだった。さらに駆け引きによる勝負師のような一面にも惚れた。彼はまさに長距離をやっていた自分にとって目指したい姿だった。
彼は今の言葉で言う私の推しだったからもちろん実業団でのレースもずっと見ていた。正直世間的に言う分かりやすい大活躍はなかったけど、それでも私は今でも高橋謙介選手の走りが好きだった。
今、箱根駅伝を見ながら思うこと。
この中で名前を覚えてもらえるような、日の丸を背負う選手はほんのひと握りしかいない。でもあの場にいる1人に出会えたことでそのあと20年以上経っても忘れられないでいる陸上ファンがいるんだよ、って伝えたい。あなたが走ったから私は陸上をもっと好きになったし、チームが好きになった。
たくさんのなかのひとつでも、私にとっての忘れられない1人。
※写真は100回大会、10区で撮影したもの