明日彼らはこの曲を引っさげでてデビューする。
「声を上げろ」
自信に満ちた声で吼えるこの曲はAぇ! groupのありったけの今をJ-Popの歴史に刻む一曲に仕上がっている。
私がこの曲を初めて聞いたのは3月17日の京セラドームだった。
この時の演出についてちょっと触れたい。暗転した京セラドームからはデビュー発表をした前日の公演とは明らかに様子が違った。5万人の期待に満ちた空気の中、センターステージ上のスクリーンがボワンと明るくなり、ある映像が流れ始めた。それはまるで長編映画のようだった。Aぇ!と時を共にしてきたファンたちと関西ジュニアだったAぇ!が一緒に駆け抜ける様子を映し出した、ある意味走馬灯のような琴線に触れるものだった。あの映像の一つ一つに描かれたAぇ!の歴史と呼応するファンとしての自分の歴史が重なり、涙が溢れてきた。Aぇ! group結成から春松竹の舞台、ドリライ、ソロコン、単独ツアー、フェス。文字通りアイドル戦国時代を不屈の精神で這い上がってきた彼らがたどり着いた先が3月の京セラであり、やっと高らかと歌い上げることが叶ったデビュー曲が《A》BEGINNINGだった。
ファンミーティングと銘打ったイベントだったからこのようなエモーショナルな演出をしたのだろうとしばらく思っていたが、その後公開されたデビュー曲の全容と歌詞を読みながら、あの演出そのものがこのデビュー曲を表しているのではないかと思うようになった。
アンプを最大値にして(=Full Ten/フルテン)世界向けて轟かせた言葉には5年、いや、それぞれの関西ジュニアとして過ごした10年をゆうに越える月日を思い出させるキーワードが散りばめられている。何度転んでも引きずり下ろされそうになっても守り繋いだモノがあり、それを歌っているからこそ《A》BEGINNINGには最近のトレンド曲にはない火傷しそうな熱さがある。
チープな表現かもしれないけど、Aぇ!の覚悟が違う。
この曲で注目したいのはタイトルが不定冠詞Aが付いていること。
タイトルは
《A》BEGINNING
であるのに対し、歌詞の中の始まりを指す部分では定冠詞THEが使われている。
「決意の証さTHE BEGINNING」
5月15日、デビュー日を始まりのポイントとして標識を打つのであれば特定の今を表すTHEで正解。今を強調するのは紛れもなく定冠詞のTHE。
だけどタイトルは不定冠詞。
始まりの地点を限定しない。
グループ名と掛けているというのは分かっているけれど、英語話者の自分はこの冠詞の使い分けがとてつもなく好きだ。
デビュー前の雑誌記事によると「ここは通過点」と歌詞をSUPER EIGHTの大倉くんが変更する提案をしたらしい。曲のタイトルに直接的に紐づけるなら出発点になりそうなところ、通過点にした。20年間の間でたくさんの点を打ち、無数の山を乗り越えてきた人が語る「通過点」には彼なりのエールがあるのではないか、と感じてしまう。
そして通過点はこの先もたくさんある。
だからこその不定冠詞のA。
今であるTHEを超えた先にある、A BEGINNING。
あらためてこのデビュー曲はAぇ!の軌跡を描いた壮大な物語のように思う。
あと少しで晴れてデビュー日。
彼らの歩む先が光指す道となれ。
Aぇ! groupデビューおめでとう。