とにかく映画館でなにか映画を観たくて、でもいくつかの候補はどうにも気が乗らなくて、A24の作品ならとりあえずちょうどいいかもなという、だいぶ軽い気持ちで観に行った。
すごい映画だった。
アメリカで内戦が起きて政府が転覆しつつある……という状況を撮影し続ける報道写真家たちのロードムービー。
時代はほぼ現代で、スマートフォンもWifiもあるけれど、いまないものは作中にもない。過去の史実を題材にしたわけでもなく、近未来や遠未来が舞台のSFでもなく、現代の戦争の映画なので、すごく恐ろしかった。
人がたくさん死ぬ。簡単に死ぬ。その無意味さがすさまじいと思った。主人公たちがいて、彼らはすこしずつ変化していくのだけど、すぐそばに死があって、だから意味はあっという間に無意味になっていく。
戦場を撮影する主人公の母親は、映画には登場しない。母親は地元で「内戦なんて起きてないみたいなふりをして」農業に従事しているのだと語られる。別の登場人物の家族も、どこかの地方で何も起きていないかのように生きていると言う。あっ、わたしのことか、と思う。地球上のいくつもの場所で起きている戦争のことを見ないふりをして映画を観たりしているわたしだ、と思う。
恐ろしい題材で、グロテスクでショッキングな映像もあるけれど、いま観られるべき映画だと思います。音響もすごくいいので、ぜひ映画館で。