弟の結婚式に出席した。
すこし歳の離れた弟のことはあまりよく知らない。わたしが実家を出た年に中学1年生になったから、彼がいろいろな経験をしてきたことをほとんど見てこなかった。正月や慶弔時にときどき顔を合わせては、そのときに応じて進路や就職の話をしたり、映画やマンガの話をしたりしたけれど、恋愛や友人関係について話すことなどない。彼がどんな人生を送ってきたのかほとんど知らない。
数年前に結婚していた妹夫婦には子どもが2人いて、まだとても小さい。乳幼児を育てる生活を妹がしているというのも不思議なものだと、あらためて思う。妹に子どもがいるということは、わたしの両親には孫がいるということだ。知らないうちに母が「おばあちゃん」になっていることも、まだ新鮮に驚いてしまう。
そのほかの親族も何人か会った。みな、歳を取った。当たり前だ。当たり前だけれど、なんだか嘘みたいだなと思う。
わたしの人生の一部だった人たちが、わたしの知らないところでそれぞれの人生を重ねている。わたしの知らない人と出会い、暮らしている。そんなのもぜんぶ当たり前なのだけど、なんなんだろうな、この感じは。
披露宴の化粧直しで新郎が中座するとき、付き添いとして妹とわたしが並んだ。きょうだい3人。そんなことを意識したのは何十年ぶりだっただろう。これはまったく知らない人の人生の物語ではなく、わたしの人生の一部のことでもあるのだ。わたしたちはきょうだいだし、両親の子どもたちなのだな。
そうなんだな、と思う。
いい結婚式だった。みなが幸せでありますように。