新しくつくられる作品が、必ずしも時代に追いついているべきだとは思わない。けれど、時代に追いつこうとし、考え、エンパワーメントしようとする気概をもった作品は、そのことだけでも評価されなければならないと思う。エンターテインメントとしての面白さも兼ね備えている作品であれば、なおさら。
映画『ラストマイル』は、いま観られるべき映画だ。いまのわたしたちが鑑賞することのできる最高の作品のひとつだと思う。
まだ公開直後なので、ここでは映画の内容には触れない。
この作品は、2018年に放送されたテレビドラマ『アンナチュラル』や2020年の『MIU404』と同じ物語世界が舞台になっている。「シェアード・ユニバース」という呼ばれ方で広報もされていて、映画には過去2作品の登場人物たちもたくさん登場する。
このことが、ドラマを観ていない人にとって映画を観る優先順位を下げる理由になるのは惜しい。
わたしは映画公開の数ヶ月前から直前にかけて、観ていなかったテレビドラマ2作を配信で観た。どちらのドラマも素晴らしい作品で、いままで観ていなかったのが惜しかったなと思うものの、なにしろ合計20時間くらいある。これから観るのは大変だろう。
個人的には、過去2作のテレビドラマはまったく観ていなくても問題ないと思う。豪華俳優陣がいろいろな役柄で登場するが、最低限の説明は映像内でされるので特に戸惑わないだろう。わかっていたほうが余計に楽しめる部分は、そりゃあある。そりゃそうだ。でもわかっていなくても問題ない。
「あのドラマのなかで生きていたキャラクターたちが、数年の時を経たいまもその世界で人生を続けているんだなあ……!」という感慨は、それはテレビドラマをリアルタイムで観ていた人たちに与えられるお土産みたいなもので、いまから慌てて配信でまとめて観たところで「数年の時を経たいまも」の部分の感慨を得るのは難しい。それは『ラストマイル』という映画そのものをなんら毀損するような要素ではない。とはいえ、誰が出ていたのかを軽く把握しておくと、より楽しみやすいとは思う。