第一子が生まれたばかりの頃、母からパン粉を付けた揚げる前のひとくちトンカツが送られてきたことがある。
この忙しいのにこれを揚げろと言うのか?
と、信じられない思いでタッパーに重ねられたトンカツを眺めた。揚げたのか焼いたのか捨てたのか、もはや覚えていない。
あのとき赤ちゃんだった娘はもうすぐ13歳。干支がぐるりと一周した今、わたしは夕食を考えるのが面倒なときは唐揚げをつくる。
油に火を入れ、鶏肉をポリ袋に入れて醤油とお酒を揉み込み、片栗粉を付けて5分ほど揚げる。10分もあれば家族が拍手喝采で迎える夕食ができるのだから、こんなラクなことはないと思う。
でも、トンカツは滅多につくらない。
薄力粉をはたいて卵液をつけてパン粉をまぶすのは手間も多いし、狭い台所が散らかって洗い物でいっぱいになるのもうんざりする。じゃがいもを潰す工程のあるコロッケなんて、もっとつくらない。
いまパン粉を付けたトンカツが送られてきたら、「助かる〜!」と思うだろう。
帰省中に母とその話をし、パン粉の壁ってあるよね、スキルが上がらないとわからない違いってあるよね、と笑い合った。
ちなみに母はトンカツを送ったことは覚えておらず、子どもが産まれたばかりの娘にそんなものを送ったなんてと驚いていた。
母も祖母歴が浅く、新米母の感覚がどんなものかを思い遣るスキルが足りなかったのだと思う。