AI(と共存したい)絵師はどう生きるか

fluffplump
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すっかり言及するだけ魂のステージが下がるトピックになってしまった(画像生成)AIだが、言及するだけ魂のステージが下がるトピックのままでいさせるのは非常に遺憾なので、「手で棒状のものを動かして平面に色を付ける手法を主としているし、これからもそうするつもりのお絵描き趣味人間」がAIをポジティブに取り入れている事例でもアピールしたいと思う。なお自分はこういう(ここは酷いインターネッツですね|fluffplump (sizu.me))立場であるし、全体的に「こういう絵を出してこういう風に使う分には他人に迷惑掛けるもんでもないやろ」という話をしているので、「無断で学習することそれ自体が問題」という立場に対して有益な情報はたぶん ないんじゃないかな。

ケース①:作画資料の作成

AIは「ネット検索してもちょうどいい例が出てこない概念」の具象化にそこそこ使える。自分の場合、理想の肌の質感を探るために「フロスト加工した、濃淡でグラデーションのあるローズクオーツ」や「薄桃色のすりガラス製の裸婦像」を何十枚か生成して肌塗りの参考にした。今までは「桃の羽二重餅」を画像検索して何とか見つけた400*300の画像1枚を見ながら唸っていたが、その頃に比べれば大分理想に近づいたと思っている。

bing image creator産
ローカルstable diffusion産

具象化したい概念が特殊すぎると突飛な画像が出てくるわけだが、それはそれで②の用途に使えたりする。

ケース②:デザインのアイデアストック

①は仕組み的にも意義的にも概ねネット検索の延長だが、ある程度以上複雑な概念をAIに投げると人間ではなかなかしない解釈で具象化してくれることがある。要するに一時期流行った「中華麺を手づかみで貪るアイマスのキャラ」的なアレだ。このAIが人間らしい連想や知識体系をまだ獲得できていないが故の尖った絵面が良い感じにインスピレーションを刺激してくれたりもする。

bing image creatorで出た「hat inspired by crème brûlée」

AIのさらにありがたいところは、「フォーマットを作って統一性を持たせつつ、一部要素をランダム化する」というのが非常にやりやすい点にある。具体的には「棒立ちに近く、背景の無い(≒服飾を見やすい)キャラクターの立ち絵」というプロンプトを固定しつつ、Dynamic Promptsでモチーフやカラーリングなどをランダムに組み合わせて生成してもらうことに結構ハマっている。ランダム要素は往々にして「まともに」反映されないのだが、それ故の大胆な・不気味なデザインがむしろ面白かったりする。

ローカルstable diffusion産、<ランダム要素>は「<saguaro> girl, <maroonopera mauve> <puppeteer> fashion style, <glaucous> hair, <field drab> eyes」
自分の絵でエッセンスを抜き出そうとしている図

AIによる画像生成は「ガチャ」とよく言われるが、「『狙ってない絵』を狙って出せる」というのはAIだからこその利点だと考えている。

ケース③:細部の案出し

①②は0から100のうち0から10を作るような使い方だが、50まで自作したものを65ぐらいにするのもまあまあ使えることがある。まともな1枚絵を描く根性に乏しく、細部のデザインを詰め切れずに「こんな感じの絵が描きたくて……」ぐらいのヘロヘロな絵のまま宙に浮かせることが多い身としては、服の裾のように「そこまでこだわらないけど賑やかにはしたい」部分であるとか、「コンセプトは決まっているがしっくりまとまらない」部分をi2iに流していい感じのデザイン案を出してもらえないか模索している。

ヘロヘロな元絵
やりたいことをi2iで割と汲んでもらえた例:「着ぐるみの人魚」というコンセプトで良い感じにツナギ部分をそこそこ詰めてくれたので、諸々の崩れはあまり気にしてない

実際には元が雑すぎるのかそこまで思い通りにはいかないことがほとんどなのだが、まあ無いよりは何らかの足しになっているんじゃないかとは思う。自作絵LoRAができたらまた変わるかもしれないので、今後に期待……できますか?

ケース④:「絵柄」の模索

画像生成AI炎上案件の先駆者とも言えるmimic(ミミック) (illustmimic.com)だが、実はローンチ時(前かも?)からの超肯定派である(取り下げ前の規約がどうだったか覚えてないが、「他人の絵を突っ込む悪用に対しての脇が甘い」というのはそうかな……そうかも……ぐらいには思う)。自分の絵柄を機械的に=限りなく客観的に平準化して可視化してくれるってめちゃめちゃワクワクしないですか?しない?そう……

自分の癖(クセ)と癖(ヘキ)が割と反映されてる例①
自分の癖(クセ)と癖(ヘキ)が割と反映されてる例②

まあワクワクするかはさておき、自分の現在の癖(ダブルミーニング)を客観視できるというのは理想の表現を追求する上で重要だと思っているので、自分の絵をAIで平準化していろんなモチーフやシチュエーションに適用してみるというのはmimicに限らず今後もいろいろ試してみたい次第である。まあそのためにはまともな絵をたくさん描く必要があるわけで、怠惰な趣味お絵描きヤーには痛いところなんだが……

現状の自分の癖を出発点とする他にも、画風が好みなモデルをブレンドして理想に近い絵柄を模索したりもしている。(②はその流れからの派生だったりする。)

②の流れで出たいい感じのデザイン案
②で生成された絵を見比べつつ自分の理想の塗りを模索したもの

上手くなったかはさておき、とりあえず厚塗りから逃げない決心(観念)は付いたので得るものはそれなりにあったと思っている。

おわりに

Q:「こういうAIツールを使って線画をいい感じにして……」みたいなのを期待してたんですが無いんですか?

A:ごめん……(ゆるふわAIユーザーの盾)

機械であれ人間であれ描画のプロセスで「任せたい」ことがあまり思い浮かばないので、アイデア出しのレベルで満足というか……

それはそれとしてそういう方向性は大いに発展すべきだと思うので、是非開発者を探したり支援してみてください。