完璧なバランスと完成度の高さ
このCDは前から次回取り上げるつもりでいたものだけど、昨晩、小澤さんの訃報を耳にして、とうとうこの日が来てしまったと、何とも言えない寂しい気分になった。小澤さんの指揮を一度生で見たくて新日フィルの定期公演を聴きに行ったこととか、TBSの「オーケストラがやって来た」は楽しかったとか、NHKはドキュメンタリー『OZAWA』を再放送してくれないかな(NHK制作ではないから難しいか)とか、いろいろなことをとりとめもなく考えていた。そんなわけで、今回は故人をしのんで、このCDを紹介する。
オランダPhilipsが1988年にベルリン・フィルハーモニーホールでデジタル録音。PhilipsがDeccaに買収されたため、現在はDeccaレーベルになっている。
このCDで特筆すべきなのは、合唱団のレベルの高さ。歌詞はラテン語や古いドイツ語などだが、発音が明瞭で正確。日本は知る人ぞ知る合唱大国だが、このアマチュア合唱団のレベルの高さには舌を巻くしかない。特に14曲目の「In taberna quando sumus」は聴きどころ。
小澤さんは、合唱を伴う大編成の曲を得意としていたようで、マーラーの交響曲第2番「復活」やシェーンベルクの『グレの歌』もすばらしい演奏だと思うけど、このCDでも音の見事な大絵巻を展開している。おかしなところがどこにもなくて、完成度が高い。
小澤さんは、ウィーン国立歌劇場(ウィーン・フィル)の音楽監督を務めていたけど、それ以前のボストン響音楽監督時代にはベルリン・フィルの定期公演にもよく客演していた。私もNHK-FMで聴いていたけど、小澤さんとベルリン・フィルは、とても相性がいいと感じていた。このCDを録音したころは、このオーケストラのコンサートマスターが日本人の安永徹だったこともあり、小澤さんもやりやすかったはず。
1988年というと、サイトウ・キネン・オーケストラを創設して海外公演を行っていた時期に当たるので、小澤さんの脂が乗り切っていたころの録音と言えるだろう。
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