あいまいな否定表現

ぎんのふえ
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公開:2025/3/8

イチゴの保存方法を説明している文章で、

イチゴはパックから出して洗わない。

みたいな表現を見かけた。これは、

  • イチゴはパックから出す。

  • イチゴは洗わない。

と言いたいんだと思う。でも、別の解釈もできる。

  • イチゴはパックから出さない。

  • イチゴは洗う。

これは「パックから出した状態では洗わない」→「パック内で洗う」という意味。要するに、どこからどこまでを否定しているのかという問題だ。

こういう場合、たいていは前後の文脈を見たり常識を働かせれば正しい解釈にたどり着くものだが、どうにも判断しかねることもある。上に挙げた例のような文を書く人は、自分の書いた文が2とおりに解釈できることに気づいていないんだろう。

冒頭の文のあいまいさを排除して明瞭な表現に書き換えると、1つ目の意味なら、

イチゴはパックから出すが、洗わない。

2つ目の意味なら、上に挙げたとおり、

イチゴはパックから出した状態では洗わない。

イチゴはパック内で洗う。

のようになるだろう。

否定文をきちんと書くのは案外難しいので、文章教室などではできるだけ肯定文で書くことをすすめている。これは日本語に限った話ではなく、英語などの外国語でも同様だ。たとえば、著名な『The Elements of Style』でも、「11. Put statements in positive form.」(https://www.gutenberg.org/cache/epub/37134/pg37134-images.html#Rule_11)の項で、否定表現は避けよと説いている。

@fluteenargent
ふだんはFedibirdにいます。こちらは長文用。