日本ではポピュラー音楽のコンサートを「ライブ」と呼ぶ人が多い。この「ライブ」を英訳する場合、たいていの人はconcertとするはずだ。では、なぜ日本人はconcertを「ライブ」と言うのか。
そもそも英語のliveは「生の」「生で」という意味で、品詞は形容詞か副詞。名詞ではない。ジーニアス英和辞典(物書堂版)でliveを引くと、
Madonna live in concert(マドンナのライブコンサート)
という用例が載っている。文字どおり訳せば、「マドンナがコンサートで生で(歌う)」みたいな感じ。動詞を補って「Madonna sings live in concert」とすれば、わかりやすくなるかな。実際のアルバムタイトルでは、大幅に略して「Madonna Live」みたいになっていることもある。こうしたタイトルのliveを「コンサート」という意味の名詞だと勘違いした日本人がいるのではないか。
なお、ウィズダム和英辞典の「収録」の項に、
▶彼のコンサートのライブ録音が新しいアルバムに収録されている(=含まれている)
A recording of his live concert is included in the new album.
とあるが、「live concert」という表現は変だ。コンサートは、ほとんどが生演奏のはず。liveじゃないコンサートがあるとしたら、CDや録画した映像などを視聴させるイベント? 何となく「頭痛が痛い」みたいな重言のにおいがする。上に引用したのは「A live recording of his concert...」の間違いではないだろうか。
ついでに補足しておくと、英米の会社が編集している辞書(下の例はMerriam-Webster's Advanced Learner's Dictionary)が挙げている「a live concert performance」という用例を見て「英語話者もlive concertと言っている」と思う人がいるかもしれないけど、このliveはconcertではなくperformanceを修飾していることに注意。これは「コンサートでの生演奏」という意味だ。
