オトシドリに夢を見ている。
おとしものポケモン。大きさ1.5m。重さ42.9kg。胸元に袋をつくってそれでエサを運ぶ。大きな音の鳴るものを、高いところから落として喜ぶ。特殊個体ですさまじく大きな個体もいて、山の頂点から岩を落として遊ぶ。
モチーフ元はヨーロッパコウノトリ、シュバシコウと言われている。ビジュアルがかなり近い。ただし連れてくるのは赤ん坊ではなく石やガラクタであり、もたらすのは幸福でなく驚きだ。
このオトシドリがとても好きだ。岩に、なりたい。
どのくらい大きな音が鳴れば岩よりも優先して選んでくれるのだろう。落としやすさは選考対象か。手頃な岩の中にまぎれて丸まって待ってみようか。落としてきたどの岩よりも大きな音を出せたなら、喜んでくれるだろうか。
夢は見る。しかし、この身は人間だ。
岩より転がることはできないし、音も鳴らない。特殊個体はそうそう数居るものでもなく、普通の大きさのオトシドリよりも大きい時点で、袋に入れてもらえることもない。喜ばれない。選ばれない。半端な大きさ、半端なガラクタ以下。
骨になってしまえば、ガラクタに混ぜてもらえる、かもしれない。それも音が鳴らなければ楽しんでもらえない。落としたことがなければ選択肢にも入らない。音が鳴りそうだと思ってもらうには、骨はあまりに白く、軽い。
硬質で手軽でそこらじゅうにあって、音が響くものになれたなら。袋の中で落下の瞬間を今か今かと恐れ待ちわびるひとつになれたなら。あまたのガラクタたちと共に、一瞬の愉悦に人生を捧げられたなら…
夢と言っても眠りの中で出会うものではなく、いわゆる夢創作に近い、と自認している。こういうSSか漫画が読みたいと話したら、夢女子をしている人には首をかしげられてしまった。