2024年の春、ネパールの山を登ってきた。
ダウラギリ(8167m)を肉眼で見た瞬間、「あ、私には一生絶対に登れない」と一目でわかった。明快な理解が山の形をしてそびえていた。8000m峰の重量感はそれほどまでに稲妻のような説得力があった。
でも、じゃあ、どこまでなら?
世界のさまざまな国からやってきた人々が集う朝焼けのプーンヒルで、ふいに「一生のうちで自分が到達できる最高の標高はどれくらいだろう?」と考えが浮かんだ。
今回のトレッキングは3000m峰を歩くライトなものだった。ペースもゆっくりだったのでたっぷり余力を残したまま帰国できた。正直、物足りなかった。
アンナプルナBC(4130m)なら、過去に登った富士山より少し高い程度だ。何とかがんばれば行けるんじゃないかな。 高度順応がうまくいけば、エベレストBC(5350m)に行ける可能性だってなくもない。
だがエベレストBCまでトレッキングしようと思ったら最低でも14日程度はかかる。普通に仕事をしながら 2週間もの休みを取るのは難しい。
そもそもこの先の10年で子の学費がどんどんかさんでいくことは確約されているのだから、エベレストBCに登るお金があるなら子の留学体験費用にでもあてたほうが建設的な判断だろう。
子の学費を払い終えるのは順調に行って50代終盤。そのときまでに自分や家族が元気で大病もせず、そこそこ収入があり、そして老後資金も危うくなければ、などの何重にもの条件を前提とした上で成り立つ可能性の話だ。
それでも楽観的な私は「エベレストBCに行けるかもしれない」と結構真剣に思っている。もしかしたらもしかしたら、ダウラギリだって登れるかもしれないよ。