感動したZineについて。3月に行った吉祥寺のZineフェスで、とても良かったzineを紹介したい。
フィルムで撮ったような質感の写真が印象的で、写真は何気ない道端に落ちているものだった。目を惹かれた。
ブースには彼女が使っていたであろう写ルンですが置いてあったので、「フィルムで撮ったんですかー?」と聞いてみたら、「写ルンですとスマホで撮りました」と。
彼女曰く、道端にある不思議なものやことを撮り集めていて、それをアラベール紙に印刷したのだとか。何かに追われているわけでもないのに、忙しいフリして外を歩いていては到底見つかりやしない、キラキラとした彼女の写真に惹かれた。
アラベールという紙に印刷された写真の裏にはQRコードが載せてあり、それを読み込むと、Sound Cloudsで彼女の作った音楽を聴けるという特典付き。
音楽の選り好みをしてしまう私なので、図々しくも、「どんな音楽やってるんですか?」と聴いたら、1曲だけ視聴させてもらった。
雑音から始まり、打ち込み系のビートが走る。ClairoのPretty Girlの冒頭を思い出させるような、宅録感に、心地いいリズム。気に入った。
彼女はボイスレコーダーを取り出して、「写真と音とリンクできるように、道端の音を録音したんです」と教えてくれた。
Zineはどちらかというと、目で楽しむものが多い気がしていたけど、彼女は「音をテーマに作ったzineなので、点字も頑張ってつけることにしました。目が見えなくても私のメッセージが伝わるように」と。わたしはこのZineフェスに行った当時は、片目が見えなかった。サングラスをかけて隠していたが、近づいたら見えるレベル。本来ならわたしに気を遣って言わないという選択肢もできただろうけど、半分当事者のようなわたしに伝えてくれて、いっそう彼女の作品が好きになった。
一つ五感が欠けることによって、他の感覚がいっそうと敏感になる。もし、わたしの目が完全に見えなくても、彼女のストーリー、選んだ印刷紙、録音された音、点字のメッセージ、パッケージで、惚れていたに違いない。
一つ感覚を失うことで、普段見落としていたことが見えてくる。見落としていたことを、他の誰かが気づいてくれて、拾われたような感覚。五感があっても見落としていることはたくさんある。落とし物がもどってきた。