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「カンディンスキー 世界は鳴りひびく」のはなし

fuguno_karaage
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公開:2026/9/5

ライシテ展以来の宇都宮美術館。冬晴れだった前回とは打って変わって真夏かつ大雨だったけれど、無事に美術館へたどり着いたのでほっとした。今年の夏は本当にあちこちで天気が崩れて災害だらけで、どこへ行くにも雨雲レーダーとの睨めっこになってしまう。

カンディンスキーを所蔵している地方の美術館といえば、宮城県美術館とここ宇都宮美術館の印象が強い。本展覧会のキービジュアルはポーラ美術館の作品だけれど、今回はポーラ美術館に限らず日本全国各地からカンディンスキーの作品が集まっていて、本当に助かる。勢揃いした日本のカンディンスキーをまとめて見比べることができるだけでなく、それらが図録になっているのも嬉しいポイントで、今回は図録を入手するのも目的の一つ。さすがの人気でしばらく欠品中だったのだけれど、ちょうど訪問日から増刷分が出ていたらしく無事に買えたので、本当に良かった。

日本のカンディンスキーで一番好きなのは、東京国立近代美術館の「全体」。もちろん本作も展示されていたので、じっくり観られて嬉しい。最晩年に制作されたものは、どれも微生物みたいな小さな何かがたくさん散りばめられていて、カラフルで観ていてワクワクする。

見どころが多すぎて本当に楽しい。

晩年の作品で今回初めて観てビビッと来たのは、ポーラ美術館所蔵の「複数のなかのひとつの像」。パステルカラーでまとまっている本作では、一列に並んだ小さな生き物たちの間に佇む、ゆるやかにカーブした紺色の大きな生き物が目をひく。何かをモデルにしているようで、でも元が何か明確には分からなくて、頭の中の奥の方が刺激されて気持ちいいな〜と思う。そういえば帰ってから図録を開いてみたら、本物よりもちょっと印刷の色味が濃くて、違った印象に見えた。やっぱり本物がいちばん。

それから、アーティゾン美術館所蔵の「3本の菩提樹」をようやく観られたのが嬉しい。ミュージアムショップでポストカードを観てから本物をいつか観たいと思っていたので、ビビッドカラーをじっくり眺められて感無量だった。ただ、やっぱり本物を見ても菩提樹が3本も見つからなくて、これは一体どういうことなのだろう…。

それから、初期の絵画や版画をたくさん鑑賞できたのも良かった。見比べてみると、どちらも同じような考え方の元で制作されていることが本当によく分かる。大きなドレスを着たお嬢さんたちを描いた「夕暮れ」や、たくさんの人々が描かれた大作「商人たちの到着」における絵の具の乗せ方は、見れば見るほど版画的。鏡を手にした女性を題材とした「鏡」は、キャプションによるとカンディンスキーの版画作品の中でも最高傑作らしく、実際に観ると確かにそう思えてくる。

カンディンスキーにおいて欠かせない要素であるバウハウスゾーンで展示されていたのは、マルセル・ブロイヤーが設計した不思議な形の椅子。座れない展示品の近くには似た形状の量産品が置かれていて、そちらは座っていいらしかったので迷わず座ってみると、身体が沈むような浮くような不思議な感覚で、慣れるまでに少し時間がかかった。変な形の椅子、もっと座ってみたい。

今回は、カンディンスキーに触れた日本のアーティストも多く紹介されていた。その中でも一番印象的だったのは、尾形亀之助という画家の「化粧」。直線や曲線で抽象化された女性からは確かにカンディンスキーのような雰囲気を感じたし、他の作品も見てみたいと思ったのだけれど、どうやら「化粧」以外の作品は現存しないらしい…残念。作品に出会えるって当たり前じゃないんだなと改めて思う。

何はともあれ、一番好きな「全体」をはじめ、色々な時代の作品を観られて本当に楽しかった。やっぱり回顧展っていいなあ。

@fuguno_karaage
映画と美術館とポール・シニャックの描く景色が好き