2024年1月14日(日曜)の日記
文学フリマ京都へ。
早起きして会場近くでモーニングでもしようかなと思ってたのに、しっかり寝坊した。
とはいえ午前中に家を出る。土岐友浩さんの歌集『ナムタル』を道中で読むことにする。
京阪電車の車窓、景色が変わったような気がしたのは気のせいかな。『ナムタル』は、難しい歌が多いかと思っていたけど、すごくチャーミングで軽やかな歌がたくさんあった。何度も読みたくなる歌集。人の動作の、そこを見てるのか、というところが切り取ってあって、何度も読んでその一瞬を確かめたくなる。
三条駅に到着し、会場のみやこめっせまで歩く。近くのロームシアターや平安神宮、美術館などによく行くので身近なエリアだけど、みやこめっせは実は初めて。江州音頭フェスタやるとこだ。
会場に入ると、テイトウワが流れていて、おっとなった。
文フリ、人が多いのと、制作者がずらっと並んでるせいで熱気がすごい。いつもパニックになるので、気を引き締めていく。
やっぱり最初は落ち着かなくて、店主の人と目を合わせないように、薄目でふらーっと歩いてしまってたけど、ふときれいな本が目に入った。店主も席にいないので、安心して近づいてまじまじ見てみる。手に取ってもいいかなーと店主を探したら、少し後ろでぶらっと立っていた人がその人で、「この三冊はシリーズなんですよー」と近づいて説明してくれた。
本が美しいのと、その距離感が話しやすくて、長々と本のこと聞いてしまった。五条でhokabooksという書店と個人出版をされてるらしい。本当に楽しく本を作られていることが伝わってきたし、組版というかブックデザインについての考え方もすごくかっこよくて、この方と一緒に本作ってみたいなと思ってしまった。あとでホームページを見ると、そういう個人からのお仕事も請けているらしい。ムムム……。
少し話をしたら気持ちが落ち着いて、ブースがはっきり見えるようになってきた。見どころの多い詩歌エリアへ移動する。
短歌のエリアは知り合いが多いけど、お客さんがいたら挨拶するのも気が引けるし、遠くから眺めていたりする。そうしたら知り合いのさくらこさんとばったり会えたので、壁際で猫の話など盛りあがった。
さくらこさんに、実は自分の本を作ってみようと計画してると話すと「めっちゃええやん! つくりつくり〜」と明るく背中を押してくれた。そして急に「あんな、奈良ちゃんにお願いがあんねん」と。
「一回さぁ、長い連作書いてみてくれへん? できれば30首やけど、20でもええよ」
えー。もともと寡作なうえに、連作なんてほぼ作ったことない。たぶん10首くらいが最長か。でも、そうやって「お願い」だなんていうふうにして、さくらこさんがエールを送ってくれたのがわかる。うれしい。作ってみようかな。
「つくり。そしたら、それがその本の目玉になるわ!」とさくらこさんが謎の確信をもって言う。なんか天啓や預言のように聞こえた。
文フリは、いつもどこか他人事で、なのになんとなくコンプレックスを刺激されたり、人とのコミュニケーションで疲れてしまう場だったけど、今回はとても楽しめた。それは、少しだけ作る気持ちが前向きになっている証拠で、一歩踏み出せてるのかもしれない。
とはいえ少し疲れて、まだ見てないエリアもあるけど14時過ぎに退出。駅まで歩いていると、前からTさんが歩いてきた。Tさんは昔から知ってる歌人。この前、正岡豊さんのイベントでも会った。「今年はよく会うね」と言い合って別れる。
休憩がてら買った本を読もうかと、角の喫茶店に入ると「本日はあと数十分でクローズして、貸切営業になるんです」と断られた。入ってから気づいたが、そこは犬も入れるカフェだった。犬を連れた人たちがこれから大勢来るんだろうか。愉快な気分になって、そのままもう電車に乗って帰ることにした。