「西の村の悪魔ってのは君のことかい?」
声をかけてきたのは三十代半ばの屈強な大男だった。無精ひげを生やしているので厳つい印象があるが、人好きのする好意的な笑顔を浮かべているので怖くはなかった。
「あんた誰」
この質問はつい先日もした気がする。先日と言ってもあの森に入り込んでからもう二週間が経とうという頃だ。あの日の記憶も細部は忘れつつある。
「俺はミハエル。一昨日近くの街に来た旅一座の者だ。住民から君の噂を聞いてやってきたんだ」
男は律儀に名乗り手を差し出した。握手を求められているらしい。怪しい奴だが一応握り返しておく。
「冷たい手だな!」
んだとこらぶっとばすぞ。ぐっと拳を握るけど、勝ち目が無いのはわかってるので一先ず握るだけに留めておく。
「この村で悪魔って呼ばれてる奴を探してるんならおれだけど、本物の悪魔を期待して来たんならこの村に悪魔はいないよ」
昼間の人通りがある道でこんな会話ふっかけてくるとはデリカシーのない大人め。慣れてはいるがそう悪魔悪魔言われればおれだって傷つくのだ。親切な対応をする気はなかったのにミハエルと名乗った大男はおれに鬱陶しい程好意的な笑みを向け続けている。
「本物の悪魔なんて探したりしないさ。なあ少年、俺と来ないか?」
怪しい大人め。脛を蹴って全速力で家に帰った。
「まあ。それって危ないことだったの?」
「絶対人さらいだと思ったんだ。違かったけど」
「違ったの?」
「勧誘されただけだった」
あの後。おれなんかの蹴りだけでそう足止めができるわけもなく、家に逃げ込んで息を整えていたら普通にドアを叩かれた。狭い上に壁の薄い家なので家の中にいても外の声は聞こえる。張りのあるバリトンボイスが高らかに少年よとおれを呼んでうるさいノックをしてきた。家に入るのを見られているので居留守も何もなかったが徹底的に無視を決め込んだ。しばらくして打撲音とうめき声が聞こえてキレた近隣住民に殺されたかと思いドアを開けたら変な恰好をした女が大男を伸している所だった。落ち着いて話ができたのはその女のおかげで、なんでも二人は近隣の交易街に滞在中の旅一座に所属しており、大男に至っては団長を勤めているという。そしてその街で「ずっと先の辺鄙な村に悪魔と呼ばれる少年がいるらしい」という噂を聞いて興味を持ちおれを見に来たという訳だった。ちなみに大男が一人で詐欺っぽい勧誘をしかけてきたのは全くの独断で、本当は明日にでもゆっくり大男をのした女と二人で来る予定だったらしい。大体は大男の言った通りだった。口から出まかせではなかったことにちょっと申し訳なくなったけど奴が失礼な大人に変わりはなく、家の少ない茶菓子を食い尽くして帰って行ったのでとくには態度は改めなかった。母さんは終始困ったように、だけど嬉しそうに笑っていた。
これだけでも十分に迷惑だったが売り飛ばされるよりは随分ましだった。次の新月を待たずに(新月の後も勿論)船にぎゅうぎゅう詰めにされて海を渡るなんてことはしたくなかったのだ。
あの晩、おれは次の新月の夜に必ず来ると約束して森を出た。朝になったら返すという約束を人魚――スピカは守り、おれは快く返してくれたお礼にとさらに次は人間の使う物をいくつか持ってくると約束を重ねた。あれからこつこつこの無知な人魚が喜びそうな物を集めていたのが報われ、現在スピカはおれの目の前で髪飾りをつけてご機嫌に遊んでいる。
「断ったのよね?あなたが来ないとつまらないわ」
「あんたのためじゃないけど、おれなんも芸できないから断ったよ」
「そう。ならよかったわ」
それだけ言うとぱしゃりと水を跳ねさせてスピカは湖に潜っていった。外界との接触の手段が奴隷になるかもしれなかったっていうのに素気ないものだ。でもこんな距離感も嫌いじゃなかった。スピカの隣は心地良い。
覗き込めば底まで透けて見えるような湖なので、潜ってもスピカが何をしているかはわかる。湖底にある彼女のプライベートスペースである大きな貝に、おれの持ってきた物の中であげたものを大事にしまっているのだ。
「ねえこのほんっていうのはどうしたらいいかしら。水につけてはいけないんでしょ?」
湖から顔を出したスピカの頭にはすでに髪飾りは着いていなかった。青っぽい感じの濁った色の石で造られた花の髪飾りで、花弁の一つがとれてしまったものだった。本当は母さんの髪飾りだったのだけど、随分前に髪を切ってしまったので使う機会がないからともらってきた。母さんはおれの突然の収集癖にも嫌な顔一つせず付き合ってくれた。スピカの頭を悩ませる本も母さんがくれた物だった。
「陸の方に置いといたら。気が向いたら上がってきて読みなよ」
「字なんて読めないわ。その辺りに置いておいてくれる?私はこの湖から出られないから」
「それ前も言ってたな。ちょっと陸に上がったりできないの?文字表持ってきたから教えるよ」
「水は人魚の空気よ。少しくらいなら我慢できるかもしれないけど、私は無理。ありがとう」
「そっか。人魚も大変なんだな。どういたしまして」
「そうよ、人魚も大変なの。もうちょっと待って、全部しまっちゃうから」
そう言って人魚は今度は赤ん坊用のスプーンを持ってあの大きな貝のところに行ってしまった。
後は持って帰らなくてはいけないものばかりだったのでいそいそと鞄の中に詰めてしまう。このままだとあの好奇心旺盛な人魚に全部ぶんどられてしまいそうだったのだ。予想はついていたが戻ってきた人魚は置いてあったはずの残りの人間たちの生活用品が無くなっているのを見つけると眉を寄せ頬を膨らませた。一目でわかる不機嫌さだった。文句が飛び出してくる前に別の話題を振ることにする。
「あの貝何?」
これはおれの好奇心からの質問だった。あんな貝知らないし、こんなところではあれを作ることもできないだろうに。
スピカは不機嫌な面持ちのまま「私の卵の殻よ」と答えた。
はて。いまこいつは自分の卵の殻と言っただろうか。
「私は卵の時にここに流れ着いたから」
「卵なの⁉」
いやまあ魚類だから、いやいや魚類でいいのか人魚。というか卵の殻ってどういうことだ。
「人魚の卵って貝なの?」
「そうよ。近くで見たい?」
驚いたおれに何故か機嫌を取り戻したスピカはふふんと腕を胸の所で組んで自慢げに言った。性格悪いなこいつ。当初の目的を忘れて「泳げないからいい」と仏頂面で返してしまった。おれが機嫌悪くなってどうする。スピカは調子を良くしたまま続けた。
「人魚の卵は真珠貝なのよ。それも特別な真珠貝。満月の光と星の欠片と綺麗な水が無いとどれだけ人魚が卵を産もうが中身は宿らないのよ」
流石は魔法生物様だ、誕生するのにも美しいものを集めてこないといけないらしい。満月の光と綺麗な水はいいとして、星の欠片ってどうするんだろう。気になったがそこは説明してくれないらしい。スピカの歌うような語りは止まらない。
「綺麗で温かい海の底に、たまに普通の真珠貝より大きな真珠貝があるわ。それが人魚の卵。卵から孵っても人魚はその貝をとても大切にするの。果てしなく広い海で生きる人魚たちにとって自分が産まれた殻程安心できる場所は無いのよ」
スピカは軽く目を伏せ、そして月の無い夜空を見上げた。その下半身と同じ、森の緑を溶かした湖の色をしている瞳だ。寂しそうな横顔をしている。憂い気な表情をしていても、垂れ気味の目を縁どる真珠色の睫毛がきらきらしていてとても綺麗だった。
「……スピカはなんでこの湖にいるんだ?家族はいないの」
意地の悪い質問だったことに言ってから気づいて後悔した。スピカはちょっとだけ傷ついた顔をして、でもすぐに困ったような笑みに変わった。おれのやったシャツの裾をいじりながら落ち着いた声でスピカは教えてくれた。
「人魚は初めて飲んだ水のある場所でしか生きられないの。この湖は小さな地下水路で海とつながっているわ。私はまだ小さな卵だったときにここに流れ着いてしまったから。……家族のことはわからないわ。私は産まれてこの方他の人魚に会ったことすらないし、ここには人魚はいないから」
初めて会ったときのことを思い出した。スピカは退屈だと、暇でしょうがないと繰り返し言っていた。人魚の寿命がどれくらい長いのかは知らないけど、おれたち人間よりずっと長寿だってことは知ってる。きっと途方もない時間をこの湖でたった一人で過ごしてきたのだ。
「私は産まれてすぐこの湖の水を飲んでしまったわ。他の水場には行けない」
「……そっか。不便だな」
「ふべんって何かしら。退屈でしょうがないのよね」
「めんどくさいってことだよ。文字やる?」
「お願いするわ!」
急に声が跳ねる。正直な尾鰭もびちびちと水面を叩いている。スピカはあまり落ち着きがない。
教えると言ってもおれ自身読めるだけで書けはしない。ただ母さんは小さい頃はおれに絵本を読んでくれたし、今でも自分が読んでる本をおれに読み聞かせてくれたりする。文字や言葉はそこで自然と憶えた。だから文字を憶えたいなら本当はおれが本を読んでやったらよかったんだろうけど、生憎すらすら読める程言葉を知っているわけでもないのだ。スピカの何かしら攻撃を回避するにはスピカ自身に文字を憶えてもらうのが手っ取り早い。辞書を持ってこれたらよかったけど家には母さんの辞書の一冊きりしかないし、そんなもの中々手に入らない。言葉はもう、おれと話して憶えてくれないかな。
スピカは色々なことを知ってるけど本当は何も知らないみたいだった。自信満々に話してても後で「らしいのよ」とか「って聞いたわ」とかがつく確率が高い。さっきの人魚のこともそうだった。休憩中に聞いてみたらなんと妖精に教わったという。妖精とは何かしら。
「この森って妖精いんの?」
「いるじゃないそこらじゅうに。人魚のことも他のことも全部妖精たちに教えてもらったのよ。彼女たちは物知りさんが多いから」
妖精は物知りなのか。字とか読めたりするのかな。聞いたらスピカはしばらく宙に視線を漂わせ、やがて首を横に振った。人間社会に興味を持つ異端者はスピカ一人だったらしい。
「そういえば木の妖精があなたに謝ってるわジャン。なにかされたの?」
「わかんない。なにされたのおれ」
「……迷わせた?って言ってるわ。彼女声が小さくて聞き取り辛いのよ。とても臆病な子なの」
迷わせたってもしかしておれが森をぐるぐる走り回ってたあれだろうか。臆病な妖精におれは殺されかけたのか。しかし謝られて許さないのは男らしくない。気にしてないよと適当な方向を向いて言ったら「レティシアはこっちよ」とスピカが反対の方向を指さした。レティシアさんって言うんだ絶対忘れない。
「スピカというのも妖精たちがつけてくれたのよ」
「へえ!意味はあるって?」
最早妖精の存在を疑うようなことはしない。言葉尻が刺々しくは無かっただろうか。スピカは特に気分を害した様子はない。細かいことは気にしないタイプなのだろうか。
「星の名前よ。湖底に輝く真珠星。それが私」
スピカは丸く切り取られた空を見上げる。今日は新月、空は快晴。星々の輝きは相変わらずの美しさをもって湖にきらめきを分けている。
「どれだろう、おれ星とかわかんなくて」
「今ちょうど見えるわ。ほらあそこ。一等明るい星があるでしょう?」
スピカの細い指がついと空を指さす。何か一つを迷いなく示しているんだろうけどおれには空を指さしているようにしか見えなかった。
「どれ?」
「おとめ座があるの、あの広い星座……は、わからないかしら」
「ごめん」
謝るとスピカは「いいのよ」とやはり気にした素振りも無く空を指さし続けた。微妙に手の位置や指の角度が変わっている。
「じゃああっちに輝く白い星はわかる?しし座のデネボラという星よ。あのオレンジ色の明るい星がアークトゥルス、その横の青白い星がスピカ。この三つを結んで春の大三角で」
「待ってわかんないわかんないわかんない!どれ?今どの星の話ししてる⁉」
慌てて話を遮ると語りモードに入っていたらしいスピカもつれれるように一気にヒートアップしてきた。ぶんぶんと腕を振るものだから水面がびちゃびちゃとうるさいことになっている。
「だからあれよ!あれがアークトゥルス、あっちがスピカ!色の違いが美しいでしょう!?夫婦星よ、ちゃんと見て!」
「どっちもわかんないって!」
「だからあれだってば!」
「あれでわかるか!どこだよスピカー!」
騒がしいやり取りはスピカが一時停止するまで続いた。曰く「オンディーヌに叱られちゃったわ……」。おれには声も聞こえなかった。妖精だろうか。しおらしいスピカと並び湖のほとりに腰を下ろす。手で湖の水を掬い喉を潤す。落ち着いて飲めば普通なんかじゃなく美味しい水だっていうことがよくわかる。その辺の湧き水よりずっと好きな味だった。
「前にあなたの目を湖の水で冷やしたことがあったでしょう?冷やしたほうがいいっていうのもあの子たちに教えてもらったのよ。オンディーヌは早く冷えるようにって水を冷たくしてくれたわ。あなたが来ると妖精たちが楽しそうにしてるからすぐわかるわ」
くすりとスピカが笑う。好奇心が強いのは妖精たちも同じなのだろうか。よくわからない。
「オンディーヌっていうのは?」
「湖の主よ。とても力の強い妖精なの。今も湖底から私たちを見てるわ。……見える?」
スピカが湖底に転がる青い石を指さす。ただの丸い石だ。
「ごめん、見えない」
「そう。仕方ないわね」
スピカが寂しそうに見えたのはちょっと都合が良過ぎるかな。とぷんと小さな音をたててスピカは底へと潜っていった。オンディーヌと話しているのかもしれないし、例の殻から何かを取ってきているのかもしれない。
しばらくするとスピカが湖の中央あたりから顔を出した。笑っている。ちょっと意地の悪い笑い方だ。
「オンディーヌがあの髪飾りはあなたにも似合いそうだって。着けてみる?」
スピカが遠くから、きっと彼女の視界ではちょうどおれの髪を梳くような仕草をした。
「冗談。こんなきったねえ頭にあんな綺麗なのは似合わないよ」
「そうかしら。アシンメトリでとっても素敵よ」
それこそ悪い冗談だ。おれの髪は基本的には灰色だが所々に深い青色の髪の束が混ざっている。親族の中にこんな色の髪を持つ人間はおらず、おれが悪魔と呼ばれる一因でもあった。茶色とか金とか黒とか、おれはそういう一色の髪がほとんどな人間とは違って見えるらしい。たかだか髪の色だけど、それを理由に悪魔だと囁かれるのは少々堪える。おれがそう呼ばれることによって母さんにかかる心労も多いのだ。
「オンディーヌは貴方に興味を持ってるみたい。あなたからは水のにおいがするって」
しばらくおれには見えない妖精と会話を楽しんでいたスピカが楽しそうな表情のままでおれに告げる。人間じゃない人(?)からすればおれはそう異端な存在ではないのだろう。待遇が変わるわけじゃないけど、少しだけすくわれた気がした。
「ありがとう。でもおれ水は苦手なんだ。ガキの頃からそうでさ、川で洗濯とか食器洗いとかもダメで、ずっと屋敷の掃除をしたりしてるんだよ」
「水が怖いの?」
その問いには迷いつつも頷いた。溺れる恐怖ではないけれど、水を恐れているのに変わりはない。
「水に入ると、水に溶ける感覚がしてさ」
水に入るとおれはいつも、水に飲みこまれるような、水に取り込まれるような、水そのものになってしまいそうな、そんな恐怖に包まれる。
「それはコントロールができてないからだ」
真剣そうな声色だ。ミハエルの珍しい真面目な様子に思わず背筋が伸びる。背筋は伸びたけど視線は落ちた。ミハエルの真っ直ぐな瞳がおれを射抜かんばかりに見つめているのがわかった。恐ろしい真摯さだった。
ミハエルは公演が終わってからも交易街に滞在しているらしい。いつも新鮮な果物が手に入っただとか外国のお菓子が売ってただとか言いながら手土産を提げて家を訪ね、来る度におれに一緒に来ないかと勧誘を続けている。彼の旅一座への勧誘だ。しかも下働きとしてではなく演者として。団長自ら公演が無いとは言え一座を離れ、こうして熱心に勧誘をしているのだ。スピカに言ったようにおれは断り続けているのに、ミハエルは嫌な顔一つせずまた来るなと言っては冗談交じりに色んな話をおれに聞かせてお土産を置いて帰っていく。そしてまたそう日を置かずに家にやって来ては最近家に寄り付かない父さんの代わりに家の力仕事まで請け負ってくれているのだ。母さんもすっかりミハエルに気を許しているようだった。警戒しているのはおれだけだ。
「水に溶ける感覚なんて、それはお前が、魔法使いとして強い力を秘めた純度の高い原石である証拠でしかない。ジャン、俺の国では魔法使いのことをジェムと呼ぶんだ。お前たちの存在は世界の宝なんだよ」
ミハエルがおれの手を取る。大きくてごつごつした大人の手だ。痩せ細った母さんの冷たい手とも、奉公先のおれを殴るご主人の怖い手とも、父さんの火傷しそうに熱い手とも、触れたことの無いスピカの柔らかそうな手とも違う。
「俺の知る魔法使いたちは皆銀細工のような瞳をしている。ジャン、お前の瞳と同じ色だ。彼らの色素は遺伝と全く関係ない色を宿す。生まれながらの魔法使いは全員そうなんだ」
手が熱い。この熱が健康な人間の体温だということはわかっている。怖いものではないけど体が危機を感じて飛び退りそうになる。力が強い。父さんと同じだ。でも父さんの手じゃない。触れてると心がくすぐったい。あったかい。優しい手なんだ。
「一緒に来ないか。最初に来た女がいただろう?あいつも魔法使いだ。あいつは腕の良い奴だから、あいつから魔法を学ぶといい。きちんと学べば力の暴走も起きない」
暴走とは何のことだろう。
「……お前は俺たちと一緒に来るべきだと思うぞ、ジャン」
優しい手をしてる、怖いくらい真摯な瞳の、きっと良い大人のミハエル。だけどお前の事を信じようとは思えない。
おれが魔法使いな訳がない。万が一魔法使いだったとしたら、おれはとっくに母さんの病を治している。魔法使いはおとぎ話の中の住民だ。不可能を可能にする救世主。
おれは現実に生きている。夢は見ない。
早く次の新月になるといい。ミハエルなんかと話してるよりスピカと話すほうがずっと楽しかった。