「喧嘩するほど仲がいい」とか「本気で喧嘩することで分かり合える」とかたまに聞くけれど、個人的には嘘だと思う。あるいはごく稀なケースでしかないと思う。少なくとも私自身はそういう経験が一切ない。喧嘩すればするほど溝が深まる経験ならあるけれど。
相手に言い負けたくなくて、延々と口論したことがある。おそらくお互い負けたくなかった。だから論理性も整合性も無視した「ああ言えばこう言う」合戦がいつまでも続いた。深夜になって眠気に耐えられなくなるまで。「仲がいい」どころか、既に関係が破綻していたと思う。そんな不毛な口論の記憶が幾つもある相手に対しては、もはや嫌悪と憎悪しか感じない。
そもそも「仲がいい」なら、深刻な喧嘩にはならないと思う。ぶつかっても、互いに歩み寄る姿勢が前提としてあるはずだから。一切歩み寄らない喧嘩を喧嘩と言っていいのかどうかもよく分からない。
喧嘩が好きだという人がいるだろうか。相手ともっと仲良くなれるチャンスだからむしろ喧嘩したい、というような人が。いるかもしれないけれど、私はそういうタイプでないので分かり合えないと思う。
「金の切れ目が縁の切れ目」と言うけれど、私の場合は「喧嘩が縁の切れ目」なのかもしれない。