遠出した先で台風に遭い、帰れなくなったので近くの女友だちに連絡した。泊めてくれるというのでありがたくお邪魔した。当時はウーバーイーツとかなかったのでデリバリーのピザを頼んで一緒に食べて、ネット配信の映画を見て、順番にシャワーを浴びて、さあ寝ようかとなった。シングルのベッドに並んで横になって、天井を見ながらあれこれ話して、眠くなったので「おやすみ」と言ったら、「この状況で何もされないなんて初めて」と彼女が言った。どうやらセックスするものと覚悟していたらしい。いやそんな気は全然ないんだけど。
「男女が二人きりになったらセックスするもの」という間違った認識が、男性だけでなく女性にも割と蔓延していると気づいた。日本は「同意」あるいは「性的同意」の概念が著しく欠けていると思う。セックスは状況的に許されるものでなく、両者の同意を得て初めて許されるものだ。そういう認識がないのはずいぶん暴力的だと思う。男女がセックスなしで一緒に寝たって全然問題ない。むしろそれだって自然だと思う。
誰かのぬくもりを感じて眠るのはすごく幸せなことだ。その夜も彼女のぬくもりと寝息を間近に感じながら眠った。思いがけず幸福な一夜だった。そういう幸せだってあるのだ。