1月月次という繁忙期の渦中にあった日々。今週もお疲れさまでした。
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2024.02.04
あはれまこと雨にありけりまたしても降るかさきほど星の見えしに
雨男・牧水の声がよく聞こえる歌である。
牧水が雨男であるという話、自分はよく覚えているのだけど、出典がなにであったのか記憶になく、追いかけることができない。Scrapboxの検索窓に打ち込んでも、21年の俺がそう言っているだけで、根拠を出すことができなかった。でも牧水、雨男だと思う。彼には雨についての随筆がある。
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2024.02.05
動物園のけものの匂ひするなかを歩むわが背の秋の日かげよ
動物園シリーズ。
言葉が順番に並んでいるから、短歌は映像を順に描いていく。タイムラプスでラフ画を描いたらこうなるだろうな、という動画的な印象の歌だ。
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2024.02.06
身も世もなく兒をかはゆがる親猿の眞赤きつらに石なげつけむ
突然の意思の強さ、凶暴性を覗かせる。牧水時々こういうことある。
頭6音の字余りだが、音節も減らないのでしっかり6音鳴っている。どう読んだらいいか未だにわからないうた。五七調だろうか…
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2024.02.07
秋の入日猿がわらへばわれ笑ふとなりの知らぬ人もわらへる
猿2首目。おかしみのある歌だ。
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2024.02.08
停車場に入りゆくときの靜かなるこころよ眼にうつる人のなつかし
なつかし2首のうち1首。いまだに、牧水は停車場に「列車に乗って」入ったのか「列車に乗るために」入ったのかわからない。
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2024.02.09
好むとなき煙草を手づから買ふことがうれしくもあり停車場の店に
このうれしの意味はまるでわからなかった。しかも、うれしく「も」ありなんだ。ということはそうではない感情もあるわけで、描かれないことが増えるほど俺にはわからなくなる。
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2024.02.10
袂よりたばこ取うでて火をつくるときのこころをなつかしと思ふ
とうでて、という音がいい歌。とうづ単体だと「う」にアクセントがくる語なので、と↑う↓でてというイントネーションになる…のか?この辺は俺は答えを持っていない。
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特に音声、イントネーションや発音について、もう少し検討する時間を入れたい。これは家でしかできないことで(カフェとかでぶつぶつ短歌を読み上げるわけにはいかない)、でも正直自分一人では達成し得ないことだ。俺の発音が正しいとも思わないし、牧水が宮崎県出身だということを考えると、彼のイントネーションと東京方言は異なる可能性もある。……早稲田出てるし、東京方言がしゃべれないわけではなさそうだが、啄木の手記には牧水の言葉がちょっと特徴的だったということも書いてある。気になる。
気にしだすといろんなことが気になる。それはとてもいいことだと思うので、書き留めていくようにしたい。