『かりもがり』は『海亀トマトスープ』に登場する容一(よういち)の兄、宗一(そういち)が主役のスピンオフ作品になります。ジャンルはサスペンス。犯罪と間接的な死の描写があり、同性に対する恋愛感情の要素を含みます。
宗一は『海亀』で、家のことを押し付けて逃げたと容一を責め「もう家族やない」と電話で告げたきり、弟の回想以外では出てこないキャラクターです。本作は彼の設定の掘り下げを目的として作りました。なんか本編がしっかりあるみたいな口ぶりですが、まだです。趣味の創作は自由なので先にスピンオフを詰めても良い。
主な登場キャラクターは以下の4人になります。
苅野 宗一 (かりの そういち):長男。引き篭もりの家族の世話で心身を消耗させながら、翻訳の仕事をこなす。父の失踪を隠すため、ゴーストライターを務めることに。
宮路 亮 (みやじ りょう):編集者。担当の失踪を止めなかった息子へ、代わりに小説を書くよう嫌味を言ったところ、想像以上のものが出来上がる。朔に心酔していた。
苅野 朔 (かりの はじめ):オカルト小説家。人格に問題があり、担当編集を頻繁に替えていた。長らく引き篭もっていたが、ある夜に出掛けたきり帰ってこない。
苅野 容一 (かりの よういち):次男。大学進学と同時に上京した。家族のことを心配してマメに連絡を寄越す。結婚式に兄を呼ぼうとするが、断られてしまう。
左が宗一、右が容一です。
これは宮路。三人とも可愛い。朔は顔が見えない感じのデザインにしたい。
メインは宗一と宮路の二人です。以下は冒頭のプロットになります。
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殯【かりもがり】とは、古来日本で行われていた葬礼儀式である。埋葬まで遺体を棺に納め安置し、別れを惜しみ、復活を願いつつも、腐敗や白骨化などの変化を目の当たりにすることでその死を受け入れていく。
文机と座椅子、本棚のみ置かれた和室に、窓から夕陽が射す。その入り口に男がふたり立っている。
「夜中に外から音がして、親父が……」
「止めなあかんて分かっとるのに、動けんかった」
背後のやつれた男の言葉を聞き、スーツ姿の男が口を開く。
「それから何日や」
「3日」
「通報は?」
「……」
「弟くん、知っとるん」
「容一……」
声が震えている。
「容一は、結婚を控えとる……こんなことが知れて、破談になってしもうたら……」
「言わへんつもりか」
「俺だけが悪いんや、迷惑は掛けられへん」
(ほんまにそうやろか)
「時期を見て俺から言う」
(他所の家のことや、どうでもええ)
「弟には言わんといて……」
(それよりこれからの……)
「何でもする」
「何でも?」
「……」
「お前ひとりに何ができるんじゃ」
振り返って視線を向ける。怯えた目がこちらを見る。
「人気作家の抜けた穴ぁ、どうしてくれるん」
踏み出すと、ふらつきながら後ずさる。廊下は薄暗い。
「ほんなら……お父さんの代わりに書いて貰おかな〜」
「何を……」「小説」
「何でもするんやろ」
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父の引き篭もっていた仕事部屋に、宗一が入る。宮路は苅野朔の復活を祈り、宗一の変貌を観測していく……という話になります。
宗一は朔に瓜二つです。元々無口でしたが、声変わりしてから更に口数が少なくなります。自分の喉を通して父が話しているような感覚が恐ろしくて。読書家で自身も小説を書き、ゴーストライターを始めるまではネットに匿名で載せていました。宮路の行動は自分に対する復讐だと思っています。弟には家のしがらみに縛られず生きてほしい。ほとんどデレないツンデレ。英語と中国語の読み書きができます。好物はうどん。20代後半。
宮路は出版社での勤務を経て、念願の小説担当の編集者になった男です。要領が良く、仕事をそつなくこなします。子供の頃から朔の作品のファンです。宗一の限界が近いと気付きながら、深入りを避けて見ないふりをしてきました。親に許されず物書きになる夢を諦めた過去がありますが、今はそれで良かったと思っています。趣味はドライブ。好物は上司の奢りで食べる焼肉。殯宮(遺体の安置場所)へつづく路、で宮路。30代前半。
ふたりの会話を考えるのが楽しい。『エンゼルセット』の癸生川兄弟は柔らかめの関西弁で、こちらのふたりは比較的ガラ悪めです。
あとプロットを文字で起こすの良いですね。絵でやるとそれで満足したり、完璧を求めて頓挫するので……。
移動時間とかにぼちぼち書き起こしておこう。