盆踊りの音。花火の音。虫の声。こどもたちの声。夏の夜にはいろいろな音が広がっている。どれもこれも、今しかないこの瞬間を楽しんでいるに違いない。そんな喧噪を聞き流しながら歩く。
粘り気のある空気がからだに纏わり付く。それ自体は不快だけどそれも含めて夏の夜だと思えばなんだか愛おしくなる。こんなに充実した世界がぼくの宇宙に現れていることに奇跡を感じている。
一歩引いたところから世界を眺めるのが好きだ。そういえばSimCityとかA列車で行こうとか、あの手のゲームが好きだったことを思い出す。ゲームの中ではなぜか不満を溜めたひとが多かったりしていたから都市や企業を経営する才能はぼくには備わっていないようだけど、しあわせそうな街の様子を遠くから眺めるのが楽しかった。
夜の住宅街を歩くと明るい窓がいくつも現れる。それを喜ぶためにぼくは生まれてきたんだなと思う。今日は祈りの日。でも、祈るのは今日に限らなくていい。