スーパーにテナントとして入っている100円ショップ。日曜の午後立ち寄ったその店内の光景がなんとも言えず、ぼくはこの光景を一生記憶に残すだろうと思った。劇的な出来事も印象的な品物もなくどうみても日常の一コマでしかないのに。この一コマがどうにも愛おしいものに思えて仕方なかった。
窓の外はどんよりとした曇り空だったが雨が降りそうな雰囲気はなかった。特別な日というわけでもないその場面から急に子どもの頃の楽しかったことや悲しかったことが湧き出してきて、油断すると泣いてしまいそうだった。子どもの頃その店に来たことがあったというわけではないのに。
この光景を見るためにぼくは生まれてきたのだろう。なんてことない日常こそがしあわせの根源に違いない。そのことを理解するためにぼくは半世紀以上を費やした。遠回りだったかもしれないが、たどり着くことができたのだ。