宇宙の神秘を信じていた。ヴァン・アレン帯を突き破り、ぼくにだけメッセージが届くと信じていた。活字は毎日おなじ情報しか示さないし、ラジオは電離層の悪意でつくられた音楽を奏でていた。
宇宙はぼくの中にある。高校生の頃、ふたつ上の先輩が教えてくれた。そのときはその意味がわからなかったけれど、いまはぼくの内側にある調和を感じることができる。
それでもぼくはラジオを手放せないでいる。プロパガンダの道具だった過去を懐かしみながらも、生きるために音楽が必要であることにはまったく変わりはない。ぼくの調和にすでに取り込まれて、百葉箱の貌をしている。