ニシノライデンという競走馬がいた。1980年代半ばに活躍した馬であり、同期にはシンボリルドルフがいる。三冠馬ルドルフの対抗馬となり得るくらいの実力馬だったが、斜行癖があり失格したレースもいくつかある。どちらかというとそのことの方が強く深く印象に残っている馬である。
平日の朝、満員の電車を降りたら改札口に向かうたくさんの人がなんとなく列を形成して改札機を通過するが、その際強引に横切っていく人がいる。そういう人に出くわすたびニシノライデンのことを思い出す。あの人はきっとどうにもならない事情があって流れている人混みを横切ったに違いない。ニシノライデンにもニシノライデンにしかわからない事情があったに違いない。それがたまたまルールに合わなかっただけなのだ。