時間の尻尾を掴みたかった。時を止めたかった。正体を見破れないと捕まえることなどできない。だから時間を観察しつづけた。奴は、止まったことがない。可視化することはできる。多くの場合針状に化けるかアラビア数字の姿になる。でも捕まえたところで時は止まらないからそれは尻尾ではない。そうやって観察していると、時間の正体は自分の中にあって追いかけていたはずの尻尾は存在しないことに気づいてしまう。時は止められないことを知ってしまう。
ひとの一生は短くて、時間の正体に気づくには一生分の時間を費やす必要があるのだ。