彼女はモテるひとだった。ルックスも良かったしサバサバした性格も好印象だった。ぼくは普通に友だちとして接していて特別に意識したことはなかった。
夏の日、彼女がぼくにカセットテープをプレゼントしてくれた。その意図はよくわからなかったけど、その頃彼女には付き合っているひとがいたから、ぼくはふたりで聴いてしあわせになれるような選曲をして、そのテープに録音して彼女に渡した。ふたりで聴くのにいい選曲してみた。そう言いながら。彼女の嬉しそうな顔はよく覚えている。
夏が終わり、彼女の恋もどうやら終わったようだった。そんな時、彼女がまたカセットテープを渡してきた。あの夏のテープだった。帰宅後ぼくはそれを再生した。夏の日にぼくが選んだプレイリストの最後の曲だけが差し代わっていた。結末は違ってたよ。そういうメッセージだとその時は思っていた。
やがてぼくたちは疎遠になった。最後の一曲はどういう意味だったのだろう。正解はわからない。あの時ぼくが応えない限り正解に辿り着くことはできなかったということに、今頃気づいてしまった。