風の強い日、ビルの谷間にニレの種が飛んでいた。
ぼくは手放そうと思っていた。でも積み重ねた過去はどこまでも柔らかくて、握る手を緩めることが出来ないでいた。飛んでいる種が無事に土の上に落ちればいいがきっとそうではないものもいるはず。それは運でしかないけれど、握られたままでは芽を出す未来を描けない。
風の強い日、ぼくは温かい記憶を手放した。ビル街を一方通行の季節が吹いていた。
風の強い日、ビルの谷間にニレの種が飛んでいた。
ぼくは手放そうと思っていた。でも積み重ねた過去はどこまでも柔らかくて、握る手を緩めることが出来ないでいた。飛んでいる種が無事に土の上に落ちればいいがきっとそうではないものもいるはず。それは運でしかないけれど、握られたままでは芽を出す未来を描けない。
風の強い日、ぼくは温かい記憶を手放した。ビル街を一方通行の季節が吹いていた。