たくさんの御下がり

ふたばこ
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亡くなった父と母の御下がりを随分とたくさん使っている。

六畳間でちょっと躯を温めるのに重宝していた電熱ストーブが昨夜壊れてしまった。エアコンは顔や目がひどく乾燥するから出来るだけ使いたくない。確か押し入れの奥にもう1台、電熱系のストーブがあったはずと出してきたら、これが調子がいい。両方とも父が使っていたストーブだ。

夫が着ているカシミアのブランドコート、柔らかく暖かいアンゴラの襯衣やステテコも実は父の御下がりだ。なんなら、マフラーも革手袋もネクタイも父の御下がり。

私はというと母の遺した、やはりブランドのスカートやスカーフ、マフラーの類を身に着けている。コンサバなセミタイトのスカートなどは流行に左右されない。母はかなりほっそりしていたので、わざわざスカートをサイズ直しに出し、尚且つスカートのために体重を5㎏落とした。

仕立てのよい服を大切に着たいと思っても新しく買うとなれば、私にとっては法外に高価。とはいえ、できれば年齢的にも全身をファストファッションや廉価ブランドで固めたくはない。お直しやウェイト管理してでも身に着ける価値があると感じている。

父も母も「いい加減、自分たちで新調したらいいじゃないの」と苦笑いしているに違いない。亡くなった後までおんぶに抱っこで申し訳ありません、と心の中で呟いている。

@futabako
にぎやかな人込みを離れてきました。