奥沢の夜

ふたばこ
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年賀状を見返して、久し振りにSさんに会いたくなって連絡をした。そういえばコロナ禍以前に会ったきりだから、もう4年は会っていない。いつもお宅に遊びに行く。そこには私の知り合いがいる場合もあるし、初対面だけどどこかでつながっているような関係のひとも来る。その近いようなそうでもないような距離感も含めて彼女と会うのは、私にとって楽しみのひとつだ。

連絡をしたらすぐに、遊びにいらっしゃいと返信がきた。

15年来疎遠になったままだったWちゃんも来ていた。ごく普通に楽しくお喋りをし、近況をやり取りしたけれど、心のどこかが乾いた。ちょっとした政治の話、米国大統領選の話、あまりにも自分とは考えかたが違って呆然とした。政治信条が違うことはよくあることだ。でも会わない15年間にひどく大きな溝ができていた。そして、同席したひとたちと話していて改めて感じたのは、いわゆる育ちのよい富裕層は今の政治の状況に大きな不満や批判を持たないのだということだった。

現在の派閥政治や裏金についても「何がそう問題なのか理解できない」というスタンスだった。昨今の事故や事件について軽く「陰謀」を疑う発言すらあり愕然とした。彼らの属する社会で見えている景色と、新聞やXで繰り広げられている世界の景色はまったく別物なのかもしれない。

Wちゃんからドナルド・トランプを擁護し高く評価する発言が飛び出し、思わず激しい調子で反論しかけた私をSさんが冷静な態度で止めてくれた。初めて実際にトランプを高く評価する人間を目の当たりにしたショックを私は今も引きずっている。

「分断」を目の当たりにした夜だった。

@futabako
にぎやかな人込みを離れてきました。