『ゼロの使い魔』というライトノベルがあります。僕のバイブルです。
落ちこぼれ魔法使いである『ルイズ』に使い魔として召喚された主人公。素直になれない性格のルイズと徐々に絆を深めながら、手に取った武器を自在に操れる能力を駆使して敵と戦い、元の世界への帰還を目指す。その冒険はやがて、世界の命運を大きく左右する──。
あらすじはざっとこのような感じ。異世界転移ファンタジー×ラブコメの金字塔、といった作品です。
ゼロ年代の作品でありまして、今にしてみればストーリーはベタな王道、という感じなのですが、登場人物が生き生きと魅力的に描かれている点において、他の作品と一線を画していると思います。
キャラクターの一人一人が持つ信条や行動理念がきちんと読み取れて、読者の心を掴んで離しません。
その中でも特にメインヒロインであるルイズの魅力は頭一つ抜けており、彼女から繰り出されるツンデレ的仕草は、世にツンデレブームを巻き起こし、多くの読者をガチ恋に落としました。ファンに愛されるあまり『ルイズコピペ』なるインターネットラブレターが誕生するほどです。
かくいう僕もルイズに劣情を抱いてしまった一人です。出会いは中学のときでしたが、二十歳を超えてなお、未だにルイズ以上のヒロインを知りません。とにかく、
好きだッ──────、ルイズ───────!
前置きを終わります。ゼロ魔の話は別の機会にするとして、このページでは最近おすすめのライトノベルの話をしたいです。
『ツンデレ魔女を殺せ、と女神は言った。』というタイトルです。レーベルは天下の電撃文庫。いまのところ全 2 巻なので余裕で追いつけます。文章も軽めです。
主人公が転生した先は、杖だった。孤独で落ちこぼれな聖女『ステラ』に拾われた主人公は、素直になれない性格のステラと徐々に絆を深めながら、邪悪な魔女に立ち向かい、その軌跡はやがて世界の命運を大きく左右する──。
このような感じのあらすじです。お分かりでしょう。
ゼロ魔の再来です。他作品と勝手に紐付けするのは作者に対して失礼かもしれないですが、確かに同じ波動を感じずにはいられません。
まずストーリーですが、結構面白いです。ゼロ魔と同じく王道寄りな進行で、展開の予想はしやすいですが、要所でほどよく予想を外してきてワクワクします。サクサク展開が進むのでくどくありません。
キャラクターについても、たいへん魅力的だなと思いました。
主人公についてですが、ヒロインのステラに出会ってからずっと一途で、素直です。最近のライトノベル主人公によくある悪いクセ(冷笑思考や無理のあるハイテンション、クサいセリフ回しなど…)があまりなく、フラットに読めました。
本作品の主人公の特徴的な設定として「大のツンデレ好き」というのがあって、これが面白さにうまく効いてる気がします。
主人公がツンデレ概念を理解しているため、ステラの照れ隠しの言動に隠れた意図を全て見破ります。そしてたくさん褒めます。そのため両者のすれ違いなどはあまり起こらず、ストレスフリーです。
ゼロ魔では主人公も素直でなく、(若干くどいほどに)対立と和解を繰り返すことで絆の深まりが描写されていましたが、本作品ではこの過程が限りなく最適化されて、まるでスキップされているので、もどかしさがなくて、安心感があります。新鮮な感覚です。
ヒロインについても、とっても可愛らしくて良いなと思います。
暴力的でヒステリックなツンと、とくに理由のないデレの組み合わせをツンデレと呼び、サブヒロインに付与している作品がよくありがちなのですが、この作品にはそのような不快要素は一切ありませんでした。
ツン要素はあくまで照れ隠しにとどめ、暴力はギャグ的なノリでのみ描写されます。そして、ツンによって溜めた裏返しの好意を、ストーリーの山場で吐き出し、ここぞと言わんばかりにデレます。良いツンデレ。
素直でなくて、ひとりぼっちで、意地っ張りで、依存気質。
でも、高潔で、夢を持っていて、信念がある。
かつて僕がルイズに惹かれた要素をもれなく兼ね備えながらも、ルイズとはまた別のキャラクターとしてしっかり成立しています。
またあのときと同じ胸の高鳴りを感覚を味わえるのではないかと期待しています!
正直、発売前の宣伝を見た段階ではあまり作品に期待をしていなかったのですが、完全に予想を超えてきました。
以下は 1 巻を読む前と読んだ後の僕のツイートですが、手のひらが回転しているのが分かります。ちょろい!
主人公に従順で母性を湛えたヒロインが求められる昨今、ツンデレ属性は絶滅の一途を辿っています。
しかしこの作品は、そんな時流に逆らうかのようにツンデレヒロインをメインに据え、その素晴らしさを世に発信してくれています。
電撃文庫もわりと積極的みたいです。とりあえずしばらくは続刊が出そうです。どれだけありがたいことでしょうか。最大限の賛辞を送りたいです。
色々書きましたが、ツンデレが好きな人には自信を持っておすすめしたい作品だということが言いたいです。刺さる人には刺さると思います。