手の皮が剥けた。こんなにもズルッとある程度の面積で剥けたのは、もう何十年ぶりかのこと。
なぜか。ノックをしたからである。
年明けから息子がソフトボールを始めた。子供会ゆえに、親の参加は必須で、父親はコーチのような立場で練習に参加しないといけないのである。
先週は、始めたということもあり、なんとなく様子を伺っていたのだが、今朝は監督(とはいってもこれも親だが)がおらず、コーチ(と呼ばれる父親)が自分も含めて4人しかいなかった。
運動不足というものが積み重なってそこに天井がないものであれば(不足なのに天井というのは違和感があるが)、わたしの運動不足の蓄積は相当なものである。ただ、この場では「経験者」ということが重宝される。二回目にして、ノックの大役を仰せつかったのだ。
ただ、内心はちょっと楽しかったのである。やり始めてからもこんなに打てなくなってるのかという情けさを感じつつも、割と無心で自分が放ったボールにバットをぶつけていた。運動不足もあり、スイングの感覚を取り戻すのに時間がかかったが、「おっ、この感覚だな」となってからは夢中でやっている。そしてまたうまく振れなくなってきた。手のひらとバットの間になにか挟まっている感覚がある。ボールの返送がそれたタイミングで、手のひらを見てみると皮が剥けている。しかもベロンと。その状態を視覚で感知してから、痛みがやってくる。それまでは痛みではなくただの違和感だったのに。ただ、皮が剥けて痛いからやめますのというのもややカッコ悪いので、そのまま続けた。うまくグリップできず空振りが増えて、これはこれでカッコ悪い。
積み重なった運動不足もあるだろうが、わたしの手のひらはあまりにも外界との接触を絶ってきたのだと実感した。たかがノックで剥ける手の皮。柔らかい表皮。刺激にさらされない生活をそれこそ剥き出しにしたのである。
タイミング的には新年。わたしは変わるのである。大それた目標は立てない。この文章をタイピングする瞬間も腕の筋肉痛に響いているほどのヤワさから。
そう今年は手の皮が剥けない男になるのだ。