家最高。
勿論旅行も素晴らしい、初めての土地にはもちろん心躍らされるものではあるが、長年かけた寝具選定が身を結び、東京に帰ってきて速攻でベッドに入れば、躰に馴染んだマットレスと完璧な高さの枕がおれを待ってた。家の布団が1番快眠できるのだ。
あとはもう、すぐにシャワーを浴びでシャンプーをしてしまえばこっちのものだ。旅館に泊まるたびに、なんだこのシャンプーはと言う気持ちになる。温泉は最高でも、4回くらいやらないと泡立たず、トリートメントをつけても髪がキシキシ行ってしまうようなシャンプーでは・・・・・・ と悲しい気持ちになる。
うちのシャンプーも長年の選定から選び抜かれた程々に高い代物なのだが、使った瞬間から解る髪の毛の指通り。やっぱもうお前だけだよ。
結局、引きこもりの属性からは逃げられない。
◇
やはり1人が好きだ。することはいくらでもあるし、1人でも十二分に何かで楽しむことが出来る。正直寂しいと言う感情よりも、1人の方が色々出来るよね、という思いが上回ってしまい、家に引き篭もることになる。でも、この感情は逃避のような気もする。他人と居ると色々考えることがあって面倒だ、なんて思って感情の揺らぎを起こさないようにしているだけ。
でも友達といるのは好きだ。でもそれは、1人では出来ないことができるから、と言う理由に過ぎない。
だからこそ、何も知らない他人から逃げ続けるような気もする。
◇
そんなことを言っても家で出来る事には限界があるので、昼過ぎくらいから外に出た。久しぶりに池袋PARCOへ。電車を降りて、いけふくろうを目指して進み、階段を上がらず横道に逸れればすぐ。うわーみんなおしゃれやんなぁ、と思うと共に、いろんなところに壁際に突っ立ってはスマホを弄ってる人が多くて何じゃこりゃと言う感じだった。みんな待ち合わせしてるんかな。
折角外に出たものの、お目当てのものが見つからず、おずおずと帰る事になった。
途中思い出して手帳のリフィルと雑誌を買ったけど、それ以外に何もする事なく、時間的に飯も食わずに直帰。
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あまりにも天気がいい。流石の自分でも、少しは散歩していいかと思わせてくれたので、家の周りをつらつら散歩してみた。
あまり行かない方向に歩いているといい感じの喫茶店を見つけたので入ろうとするが、一旦通り過ぎて、辺りを一周して、もう一度店の入り口に立ち、深呼吸をした後、覚悟を決めて中に入る。
こぢんまりした内装。ご夫婦と思しき2人がカウンターにおり、いらっしゃいませ、と声をかけられる。そして、あまりにもヤニに染まった壁紙。昔は喫煙出来たんやろなぁ、と思ってテーブル席に座ると、なんと灰皿が置いてある。
店員さんが水を持ってた時に思わず伺うと、煙草吸えた。凄い、まだ生き残ってたんだ、みたいな話をすると、マスターが一本煙草をくれたので火をつけて早速吸う。ニコチンは6mmだった。
コーヒーが届いて、煙を燻らせたあと、コーヒーを口に運ぶ。美味い。煙草とコーヒー、これが最高なんだよなぁ。
飲食店で煙草が吸えなくなってからは必要がないと思って買うのを辞めていた。おれはニコチンが欲しくて吸っているのではなく、味で吸っていたのでコーヒーと一緒に煙草が吸えないのであれば煙草を吸う必要性はなかった。
コーヒー単独でも十分に美味い。煙草なくてもいい。けど、あってもいい。そんな塩梅。
家から徒歩3分でこんな店があるなんて・・・・・・ ただ、おれの吸っていた煙草は大変珍しく、そんじょそこらでは手に入らないのでそれが近くで買えない限りは復活することはないだろうなと思いながらも、頭の中では、徒歩圏内の煙草屋の位置を思い出しているのだった。