ゲームは昔から好きですが、累計2000時間プレイしたゲームはSplatoonシリーズしかありません。なにが好きってゲーム性もいいけど、抜け目のない設定の作りこみがツボなんですよね。何から何までさすが任天堂!と膝を打つモノが大変多いんですが、何よりも自分が狂ってしまったシナリオを自分目線で語りたい。
それが、オクト・エキスパンションです。
Splatoon 2 オクト・エキスパンション
ちなみに追加コンテンツですが、Splatoon2のROMがあって対人ゲームできるプランに入っていれば追加料金なくあそべます。好きな側面はいっっっぱいあるしなんならエンディングを思い返すだけで泣ける体なのですが、とりあえず今回は全体的な世界観を語ります。
まず、このトレーラーを見てくれ。
スプラといえばティーン以下に人気の高いゲームだと思いますが、それに反してめちゃくちゃ教育に悪そうな世界観。笑 Cero-Aで出せる中のギリギリのラインを攻めてるところがありますね。アングラ感で歌詞を翻訳したらやばいフレーズが入ってそうな音楽とか、治安の悪そうな地下鉄とか、学生時代に深夜まで起きてちょっとオトナなアニメを見てる時を思い出す。
当時はスプラ1のキャッチーさ、スプラ2のスタイリッシュさの次にこれが来たのでキャッキャと喜んでましたねー。スプラはそのカジュアルさから子供がやるもの!みたいな意見を多く見かけたのですが、オクト以降は体感でずいぶん減りました。現行のスプラ3もかなり荒っぽい攻めてるモチーフが多いですが、多分それができたのはオクトが受け入れられたからじゃないかなって個人的に&勝手に思っています。
シナリオも結構「練られてる」モノが多くて、ゲームのための動線ではなくて、キャラクターが生きるストーリーラインが端的に組まれている、もしくはキャラクターの生き方を推測できる作りになっている点にめちゃくちゃ感心します。
さて下記から「ネタバレ全開」でいきますので、気にしない方はドゾ。見たくない方は中古のROMを手に入れて自分の目で確かめるんだ!
あらすじ
“気がつくとそこは、あやしげな駅のホーム。目覚めたキミは、タコの姿になっており、何かのショックで記憶を失っていた。右も左もわからず、手元には何のブキもないが、どうにかしてこの場所から脱出する必要がありそうだ……。”(公式サイトより)
記憶をすっかり失った主人公が、地上に出るため頑張るぞ!なシナリオ。
目覚めたところは謎の巨大組織の中。どうにか武器を手に入れて先に進むと、深海生物が利用する「深海メトロ」のホームにたどり着く。とりあえず地上に脱出するためには、各路線の要所駅に散りばめられた「アレ」を4つ集めろという。主人公の仮の名は8号、通称「ハチ」は、自分が何者かもわからないまま、とにかく脱出を第一目標に目の前の試練を一つ一つクリアしていきます。
この先のざっくりした出来事は公式がまとめているのでこちらをどぞ。
全体テーマ考察
端的にいえば、「昔は良かった、今は…」という喪失感に尽きると思っています。で、それをわざわざスプラでやっているという点が私のツボにめちゃくちゃハマっています。
元々スプラの世界全体は、温暖化の影響で人類が絶滅した後に出来上がった地理・社会・生態系で成り立っていて、現代の社会問題の延長にあるシナリオになっています。オクトの喪失感についても、当時の現代人をめちゃくちゃ風刺してるのではないかと思っています。発売した2018年といえば推し活みたいなストレス発散も今ほど浸透してなくて、ただ電車に乗って死んだ目をしたまま社会の歯車として職場に向かうサラリーマンとか、自分が何者なのかわからず夢が持てない若者とかがぼーっと生きてるみたいな世の中だった風にも思います(今もそうかも)。それぞれ、ゲーム中のキャラクターに姿を重ねてしまうところがある。
で、プレイヤー側にも昔を懐かしく思えるような仕掛けが幾つかあります。例えば、「深海メトロ」にある各駅の名前。ステージの背景に浮いている小物。1980〜2000年代前半を生きたことがあれば、懐かし!とつい口にしてしまうものが目に映る。とんだオッサンホイホイだよ!ちなみに私の好きな駅名は、「リンゴダ・イエッ島駅」「ジュリセンオ太刀台駅」「ザーギン・デーシ洲駅」とか…寒いダジャレじゃねえか!他にも仲間たちとのやりとりをする場所が昔の個人サイトに見られたチャットの形式を模していたり、キャラものの消しゴムみたいなアイテムがあったり、大人が見て「何これ〜!」と言ってしまうやつが満載です。
BGMについてはまた次回にしようかなとおもうのですが、ステージ全般にVaporwaveというジャンルの楽曲が使われています。このジャンルも、「昔はよかった、今は…」な懐古主義をテーマにしているとも言われているやつ。ラスボスがVaporwaveの有名アルバムのジャケットにめちゃ似てたりもします。もしかしたら楽曲ジャンルの思想まで意識してるかもね?って思ってしまう。
「深海メトロ」の深海は、水圧=プレッシャーがかかる場所。また、ある意味では古く忘れ去られたものが奥底に沈んでいるメタファーにもなるのかもしれないですね。深海という息のしづらさと現代社会の息苦しさのリンク、漠然と漂う喪失感、現実逃避の手段として忘れかけていた過去に思いを馳せる懐古主義…そんな深いテーマをメインではなく追加コンテンツに入れてくる気合の入れようがやばい。ありがとうございます👏
もう一つ、別の大事なテーマがマジョリティとマイノリティの種族差、現代的に言い換えると「多様性の問題」だと思います。主人公の8号はタコ、イカ世界ではマイノリティです。そしてシナリオに絡むテンタクルズは、イカであるヒメちゃんとイカとは少し違った見た目のイイダちゃんのデュオ。ここはキャラクターのところで改めて深めたいのですが、ナイーブな話題をスプラらしくスパッとさっぱり解決しているところもさすがだなーと思います。若いプレイヤー層が特に多いスプラだからこそ、こういう人間関係のキモになる話題を取り入れてることに重要な意味があると感じますね。
シナリオについて
シナリオについては特に考察要素もなく、ゲーム上で明かされるものが純粋にいいなって思います。以下のほとんどは、作中で明かされているものの焼き増しです。
ハチが迷い込んだ深海メトロは、「秘密結社ネル」の一部。この組織では、この世に生きる海産物(主にタコ)の記憶と思想の一切を奪い、手足のように使っています。使うだけ使った後、彼らはネリモノとしてミンチにされてブヨブヨにまとめられてしまう。最終的には海産物を1つのネリモノにまとめて、イカタコの思想統一を図っています。
この首謀者はニンゲンの意思を反映したAI。その名をタルタル総帥という。本来はよきAIだったはずなのですが、1万を越える年月の間にイカみたいなお気楽種族より人間の方が偉いし強いぞ!みたいな考えを持ち、海産物主体となった世界に嫌気がさしたようです。(ちなみにAIの作成者は、ジャッジくん・コジャッジくんを生存させた博士。博士すげー)
この組織の面白ポイントとしては、組織全体が人間の体内を模していることでしょうか。組織から脱出する際に全体像がわかるのですが、、最下層が腸、上層に行くにつれて、横隔膜とか脊椎とかに繋がっていく。ちなみにネリモノにするとは、腸で消化したものを一緒くたにまとめて排出する…という、文字通りのクソ構造になっているというやつ。笑 ロゴマークもカッコいい💩だと公式で言われている始末。ネル社のネルも、「練る」ということですな。
脱出を果たした8号は、イカ達の作った歴史を塗り替えようとする「秘密結社ネル」のトップ、タルタル総帥と対峙します。最終的に人類vs海産物の、世界の存亡をかけた「3分間のナワバリバトル」へ発展します。スプラ界のスポーツ的な遊びが、文字通りの生物の縄張り争いに!!また、ハチが地上に出てから初めて触れるイカ文化でもあります。この辺は実際にプレイしてるとエモ中のエモなのですが、キャラを深めた後にまた触れてみたいと思います。
海産物代表は、秘密結社を抜け出したハチ。対する人間代表は、美術室にある石膏像の姿を模した「ネルス像」。先ほどちらっと述べたとおり、この元ネタはFloral Shoppeのジャケットですね。いやモチーフの選び方めちゃくちゃ上手くない? そんなに本気出していいの? 追加コンテンツに?
ちなみにこの最後の戦いの場所は、スプラ2のラストフェスに採用されましたね。遠くにはネルス像が見えるし、エモい演出がいっぱいあって最高だった…これは考察ではなくて単なる思い出話。
はあ、語り出したら止まんねえよ…どうしてくれるんだ…。
とりあえず根幹の部分は話せるだけ話したので、キャラと音楽については次回また触れたいと思います。スプラ3のサイド・オーダーに重なる部分もあるしね。配信までに書けるかな…
ざっくり参考文献
『ハイカラウォーカー バイスプラトゥーン2』Gzブレイン(https://www.amazon.co.jp/ハイカラウォーカー-バイ-スプラトゥーン2-週刊ファミ通編集部/dp/4047333689)
記憶の中のファミ通2018年スプラ特集