『裸のランチ』、めちゃめちゃかっこいい。この本の中枢である強烈なエログロナンセンスの部分は一旦置いておいて、手本にしたいかなりクールな作品。 エログロナンセンスの下品で下賤で下卑でどうしようもない部分を、文章の美しさで黙らせている本。薬物中毒者に見る話の取り留めのなさ、纏りのなさ、既存の文章表現体系に収まりきらなそうな想像力(本人的には幻覚中にみるれっきとした視覚情報)、その支離滅裂な情景の説明を美しい文章の一つで小説へとクオリティが至るまでに軽々と押し上げてしまっている本。エログロの下賤な話をしているはずなのに、何故か品位が保たれているような文章の本。この力量が無い者が仮に同じ内容を描こうとしても、「悪趣味」の一言で片付けられるだけだと感じる本。たとい伝わらないと踏んでいても自分の言葉で話し、読者に耳を傾けさせるまでいけばとてもいい本だと思う。その世界観や見えている景色に読者は興味を示す。話なんて畢竟どうでもいい、文章のためにこそ存在するのだと言わんばかりの小説。
最近シュルレアリスム系に続いてこういった超現実的なものを読んでいる印象。シュルレ系が全般すきという訳ではなく、むしろ面白さがそれほど分からなかった。それでも『裸のランチ』は面白い。妄想や幻覚だとしても、限りなく本人が体験したであろう事実を描き、なによりをそれを正直に自信を持って意気揚々と書いているのがいい。真正面から勝負していてカッコいい。見習うべきだ。久しぶりに興奮した。去年末にプレイした『Disco Elysium』以来に衝撃的な作品だった。