文章を書きたい。
文章、或いは文、或いは文字が書きたい。何もしてないのに疲れた。三回目の吐気のように、もう脳が何かを出したくても何も出てこない。そんな様子。
美男子が丸鶏を食べている。
私の目の前で美男子が丸鶏を食べている。美しい曲線を備えた丸鶏に躊躇なく素手の指先を突っ込み、解体し、食べている。
指の関節までもが油に濡れている。鶏の表面はローストされていて、皮が伸びる。引き延ばされた皮が限界を迎えて弾けるように破れる。中まで柔らかな火が通った色が見える。両手で取り出した塊の硬い骨を掴み、捩り、取り外れた一つの関節の周りに付いた肉を食べる。汚れを気にしない手の把持する角度を変え、顎を動かし、尖った歯牙で、舌で、骨から肉をこそぎ落とすように食べる。軟骨のついた先端を口の中に収めて舌を動かす。頬の表面を縦横無尽に蠢く舌の凹凸が確認できる。私は唾を呑んだ。
骨を取り出すと皿に避ける。解体された丸鶏に濡れた手が伸びる。それを繰り返す。