脱帽

ginmokusei
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最近の人は帽子を脱がない。

昔は、例えば部屋に入室するときやお客様の前、道で知り合いに会ったときなど、主に挨拶をするタイミングで失礼がないように帽子をとって挨拶するのがマナーだった。

わたしが子供の頃は、たとえおしゃれ帽であっても、上で挙げたような挨拶が必要な場面では帽子を脱ぐように親やおとなに言われていた。おしゃれ帽は脱がなくていい、という風潮になったのはおそらくわたしが高校生ぐらいのころ、そのころは例えば帽子をかぶった職業の人などは、会釈の際にはつばに手をかけて帽子をとるような動きをして、ちゃんとした挨拶やきちんとした場では帽子は脱ぐ、とされていたように思う。

今はもう、ヤマトも佐川もAmazonの配達も、食材の配達の人も、ガソリンスタンドの人も。もはや誰も帽子を脱いでいない。(興味がないので注意して見たことはないのだけど、高校球児もいま帽子取らないんじゃないかな)

そもそも、礼をするときには帽子を脱がないと失礼、という作法を最近の人は知っているのだろうか。

わたしは帽子が好きで外出のときはたいてい帽子をかぶっていて、帽子をかぶると髪はぐしゃぐしゃになるのであんまり脱ぎたくない。帽子を取らなくては失礼という風潮がなくなったのはよかったと思っている。

だが一方で、脱帽という言葉の意味がクイズ番組に出題される日もそう遠くないんだろうなと思う。

ことばが消える、時代の境目。

昔のオフィス勤務サラリーマンはスーツにハットを合わせてる人も多かったが、帽子をかぶって出勤していた波平さんが、道端で知り合いに行き合ったりしたときに軽く帽子を持ち上げて会釈する仕草がジェントルで好きだった。

わたし自身は脱ぎたくないんだけどね笑

@ginmokusei
fere libenter homines id quod volunt credunt