ツイッターで古い家屋を目にして思い出したのだが、父の生家(祖父母の家、というべきか)は浴槽が昭和によく見られたタイル造りだった。
父が幼少のころは五右衛門風呂だったらしく、いつタイルの浴槽に取り替えたのは定かでないが、その石造りのほうの浴槽はすでに長いこと家の前で苔むして金魚の水槽になっていた。
父の兄が家を受け継ぎ、子供のころは長期休暇のたびに家族で泊まりに行っていたのだが、風呂はおそらくあとから台所のとなりの土間に造り付けられたような形で、床は石、夏はともかく冬は本当に寒すぎて(なにしろほぼ外だから)風呂に入るのがかなり億劫だった(ちなみにトイレもボットン便所だった)
寒さに凍えながら体を洗い、浴槽に飛び込んでつるつるしたタイルの模様をなぞりながら体を温める。今となっては模様もあまり思い出せないが、貴重なものだったなと思う。うっすらと憶えているのは、基調が水色で、緑がかった青のふち、あずき色のタイルでもようがつけられていた。
両親は毎年訪れているがわたしは成人してあまり行くこともなくなり、たしか十数年前にその家は取り壊され新築された。
それからも結局一度も訪れていないので(わりと辺鄙なところにある)どういう家になったのかも知らないのだが、今思うと家じゅうの窓枠という窓枠がすべて木造の古い昭和建築だったから、写真でも撮りに行けばよかったなとちょっと後悔している。
行くといつも刀剣などを見せてくれた古物が趣味の伯父は、あのタイルの浴槽や建物を写真に残しただろうか。